恋愛における認知バイアスの罠 その二  私の彼「去る者追わず」タイプなの



どうしてそう見えるのか、どうしてそう感じるのか

はじめに下の絵を見てほしい。あなたはそこに何が見えただろう。



おそらくほとんどの人は「121314」という「数字の列」が見えたのではないだろうか。

次に恋人に関する最近の言動についての記述を読んでほしい。
① 最近lineのやり取りが減った
② スマホをかけるときは席を外すようになった。
③ 先日一泊出張といいながら出張していなかった。
④ 平日の夜、女性ものの香水を買っていたところを自分の友人に目撃された。
⑤ 週末はいつも会ってくれていたのに、先週の週末は友人に会うという理由でキャンセルされた。
これから何を連想するだろうか。浮気の可能性を考えたり、他の女性の存在を感じたりしなかっただろうか。

今度は下の絵を見てほしい。



何が見えたであろう。今度は「ABC」というアルファベットの列が見えたと思う。

気付いた方はいるだろうか。
実は最初の絵にある真ん中の「13」と後の絵の「B」は全く同じ形をしているのである。おそらく二つの図の比較が無ければ、同じ形のものが別の意味にとらえられていることすら気づかなかったはずだ。

では、何故最初の図は12「13」14と見え、後の図はA「B」Cと見えるのだろうか。何故恋人の行動に浮気の可能性を感じるのか。

一貫性バイアス


通常、一貫性バイアスとは次の二つの意味で用いられる。

① 情報群に対し一貫性を求め、さらに一貫性のあるものを信じようとするバイアス
② 一度自分がコミットメントしたことに対し、一貫した行動をとりがちになるバイアス

今回は①の意味でのバイアスをとりあげる。

さきほどの「13」もしくは「B」のように同じ絵や同じ出来事、同じ情報がときに周りの状況に応じて全くことなる解釈がなさることはしばしば起きる。その原因が情報間に一貫性を持たせようとする心の動きにあることが分かっている。

人は見たもの聞いたものや一連の情報に対し矛盾のない一貫したストーリを作り上げようとする。そしてときに完全に独立した情報や違ったカテゴリーに対する情報に対しても、それが並んでいたり時系列に沿っていたりするだけで、一貫性を求める。そしてその一貫性はしばしば意味が無かったり、多くの場合間違っている。

問題はそもそも一貫性を持たせる必要が無い、あるいは一貫性など無い情報にも無理やり一貫性を持たせてしまうことにある。そしてこの一貫性を持たない情報(情報そのものが間違っているケースも含め)の発信源は人間の言動であることが多い。恋愛においてはこれがしばしば問題を引き起こす。

矛盾だらけの存在・・・それが人間


彼はいくつかの役割を演じている。その役割の間ではしばしば無関係な行動あるいは矛盾した行動をとったりする。

「彼氏という役割」の彼は、落ち着いた関係を恋人に求め始めた。lineのやり取りを減らそう。
「社会の一員としての役割」の彼は、マナーに関する本を読んだ。「人と一緒のときに目の前にスマホを見たり、電話をかけたりするのは失礼である」そのマナー本には書いてあった。早速実行しよう。
「ビジネスマンとしての役割」の彼は、顧客からの急なキャンセルのため、一泊出張を取りやめた。
「家族の一員の役割」の彼は、妹の誕生日にクリーンの香水をプレゼントしようと考えた。
「親友の役割」の彼は、地方から出てきた高校の親友のために東京案内に週末をあてた。

一つ一つの行動はとりたてて議論すべきものでは無いだろう。それぞれの役割に応じ彼は選択すべき行動の一つを実行したに過ぎない。ところがこれらの行動に一貫性を持たせようとするやいなや問題が生じる。情報のあいまいさが更に拍車をかける。曖昧さの度合いが大きいほど解釈の範囲が広がるからである。

あなたは彼の言動を彼に関する情報を「彼氏という役割」で首尾一貫したストーリーを作り上げようとする。多くの場合ありもしないストーリを作り上げる。一度出来上がったストーリーは独り歩きし、あなたはそのストーリーの信ぴょう性を高める情報にしか目がいかなくなる。

このような悪循環に陥らないためには、人は皆それぞれいろいろな役割を演じており、首尾一貫した言動をする生き物では無いことをよく理解することである。真に良好な恋人関係を築いているカップルはお互いの「恋人という役割」以外の役割を常に尊重している。そして恋愛に限らず成熟した人間関係を気づいているカップルほど相手の分からない部分や矛盾する部分を受け入れ、それでいて不安を感じていないものである。

私の彼は「・・・な人なので」


情報が曖昧なほどそして情報が少ないほど、首尾一貫した解釈は容易になる。
そしてその確信も強くなる。

彼は去る者追わずのタイプなので・・・
彼は熱しやすく冷めやすい性格なので・・・
彼は気分屋なので・・・
彼は縛られるのが嫌なタイプなので
彼は・・・ 彼は・・・ 彼は

恋愛がうまく行かない女性の口癖の一つが「私の彼は~なタイプ」なので・・・・であろう。

よくある例が「私の彼は来る者拒まず、去る者追わずなタイプなので」である。私は何度かこの言葉を話す女性と接したことがあるが、その根拠を尋ねるとすべてのケースで「彼がそう言ったから」である。これに過去の恋愛話や友人の言葉が加わると、確信はゆるぎないものになる。

恋愛においては、「首尾一貫」し「自分が納得できる」ストーリーこそが信ずるにたるべきものとなる。情報の量、質、正確性は逆にノイズになってしまう。皮肉なことに、相手を良くプロファイルしていない人ほど、確信的に恋人をタイプづけてしまう。彼が自らを語る言葉が情報源のすべてであるならば確信バイアスの可能性は非常に高い。単一の情報は矛盾が無く、完璧に首尾一貫しているからである。

要するに確信めいて「私の彼は~なタイプなので」とか「~な性格なので」という言葉が出てきたら、その人はほとんど相手のことを理解していない、おそらくは誤解しているということである。情報量が決定的に欠如しているのだ。そしてそのことを本人はまるで自覚していない。

「彼は・・・のタイプ」だと言われ嬉しい男はいないだろう。いるとすれば言葉で操るタイプの男性だけだ。「彼は自分からは告白しないタイプなので」「彼は連絡は自分からしないタイプなので」「彼はしばらく連絡しないとすぐ覚めてしまうタイプなので」いずれも彼自身から出た言葉に違いない。

通常本人の言葉をそのまま受け取ることはしないであろう。詐欺師の「俺は嘘をつかない」という言葉を丸呑みにしているようなものである。ところが恋愛においてはこれが当たり前のように行われている。恋愛における一貫性バイアスは恐ろしく威力を発揮している。
今あなたが彼の言葉をそのまま信じ自らの口で語ったとしたら、その時点で言葉に操られており、勝つための恋愛においてはほとんど負けている状態であることを知るべきである。。

してはいけないこと、すべきこと


一貫性バイアスに陥らないためには、一連の出来事に何かしらの理由があるのではないか、という考えを一旦捨てることである。矛盾した情報や関係の無い情報が出てきたならば、そこに無理やり一貫性を求めないことである。
彼の言動が仕事の延長線から出てきたものならば、それを無理やり自分との関係に意味づけをしたりしてはいけない。家族に対する言動や友人に対する態度を恋愛の中の行動に無理に結びつけないことだ。そうすることでそれぞの役割を超えた矛盾の無い彼の本来の性格が見えてくる。

スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」では自分の人生のおける役割を書くことを勧めているが、恋人に対しその役割を書いてみるのもいいかもしれない。いろいろな言動を役割に応じた軸に載せてみると辻褄の会うことは多い。無理やり妄想ストーリーを作り上げたり、画一的な~なタイプの人を作り上げることの防止策になるだろう。
主観のみで彼の性格を作り上げることを防ぐには、このサイトの彼レポートのように理論に基づき、多くの客観的情報から分析するツールを使用するのも有効かと思われる。

あなたの心に深く根付いている彼のタイプやら性格やらを一度白紙に戻してみるのもいいかもしれない。今まで見えなかった彼の本来の姿が見えてくるに違いない。特に彼自ら語った言葉が唯一の情報源だったらやってみる価値は十分にある。

認知的不協和その後


さて前回の「認知的不協和」(http://u-rennai.jp/contents/report/19/)のレポートの際、問題を二つほど出しておいた。考えていただけただろうか。

問1. あなたの要求に対し「認知的不協和」に陥って二者択一の選択を逃れようとすしている相手にYESかNOか選択を認識させるにはどうすればいいでしょう。

答えは「ガイドラインを出す」である。ガイドラインは問題を二者択一の問題としてはっきりと認識させる役割をはたす。これを理解せずに問題を認識させることができず結局有耶無耶な状況から逃れられないケースがまま見受けられる。ガイドラインを出すときはYES/NO以外の道をしっかりと防ぐ工夫が必要である。
例えば浮気に対するガイドラインの場合、「私と付き合い続けたければ二度と浮気をしない」「浮気をしたら私は別れる」この二択をしっかりと相手に感じさせなければいけない。「こいつは俺からは離れられない」と少しでもこう思われていたらガイドラインを出す意味は無い。ガイドラインを出すにもそれなりの準備が必要なのだ。
認知的不協和は選択後にも表れる。二者択一の一方を選んだ後、「これで良かったのか」という不協和が生まれる。この不協和を解消すためにほとんどの場合「自分の選択は正しかった」という理由付けがなされる。一度自分が望む選択肢を選ばせれば、ほぼ勝ちなのである。ただし、油断は禁物である。選んだ選択があまりにひどい状況をもたらす場合、選択を変える可能性もある。
一度結婚を約束した男性は「これで良かったのだろうか。いやこれで良かったんだ。結婚は素晴らしいものだ。自分の子供はかわいいに違いない。社会的にも一人前とみられる。結婚を決心して良かった」。このような選択を肯定する方向に向かう。男の最も大事な要素の一つである社会との関わりの中に結婚の重要性を見出したら、ほぼ決心は揺るがない。一度結婚を決意した男の行動が早いのはそのためである。

問2はいくつか方法がある。例えば自分の要求が不協和を与えない要求にする、というものがある。彼が「自分の時間を確保したい理由」が体を休めたいことにあるならば、「体を休める」ことを目的にしたデートにするなどある。そこから徐々にあなたが望むデートの内容に近づけていけばよい。問1のところでも述べたがこの選択が正しかったと彼に思わせるように居心地の良い時間を与えることはとても重要なことである。

次回は認知バイアスの中でも最もやっかいなバイアスをご紹介する。それは一度起きたエラーをより強くより深く心に定着させ、広めてしまうがん細胞のようなバイアスである。いかにこのバイアスを避けるか、恋愛においては極めて重要と考える。

次のレポート:恋愛における認知バイアスの罠 その三  男は浮気する生き物だから 前半
前のレポート:恋愛における認知バイアスの罠 その一  認知的不協和

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