小林幸子騒動から学ぶ、理不尽な人たちへの対処法。

公開日 2015-08-30 20:02
小林幸子騒動から学ぶ、理不尽な人たちへの対処法。
登場人物

渕上賢太郎(ふちがみ・けんたろう)博士
モテモテアカデミー及び夢を叶えるアカデミー主宰。数学、生命科学、行動経済学の博士号を持ち、人の心の動きを論理的に解明する。小林幸子のイメージは「衣装の人」。

山田君
博士を慕う冴えない32歳。博士の教えにより、今年ついに彼女をゲット。彼女いない歴=年齢のモテない人生に終止符を打った中堅IT企業のSE。歴代の幸子衣装の中ではメガ幸子が一番好き。  

※この記事は、2011〜2013年までの間に、MSNのニュースサイト・ドニッチにアップされたぐっどうぃる博士の記事の復刻版です。


山田君 小林幸子さんのお家騒動、ドロ沼ですねえ。去年、57歳で49歳の会社社長と結婚した時には、女性が上の年の差婚もあるんだなと感心したんですが……(※この記事は、2012年に書かれた記事です)。

博士 どんな騒動か4行で教えてくれ。

山田君 小林幸子さんの夫、林明男氏が小林幸子さんの芸能活動に口出しまくり。
小林夫婦と、小林幸子さんの事務所社長、専務との関係悪化。
社長と専務は解雇され、それが納得できないと弁護士を立てて争っている。
これは、紅白歌合戦の出場すら危ぶまれるスキャンダル。
って騒動です。

博士 なるほど。

山田君 もう少し補足すると、解雇された元社長は、33年間小林さんを支え続けてきたやり手の女性なんだそうですよ。紅白に毎年出ることができていたのも、その人の手腕あってのことなんだとか。

博士 ほう。

山田君 そんな恩人を裏切ってつき合いの浅い夫の肩を持つなんて、ひどくないですか。林さんは「紅白の衣装代が高すぎる。僕ならもっと安くできる」と言って元社長と口論したり、元社長を通さずに勝手に小林さんの仕事を取ってきたりしたんだそうですよ。

博士 そりゃあ、多分、限定合理性ってやつだな。

山田君 また難しい言葉がでてきましたね。何ですかそれは?

博士 限定合理性とは経済学の概念で、人間は合理的であろうとするものの認識能力の限界によって限られた合理性しか持ちえないということだ(wikipediaより)。

我々は、実はみんなそれぞれに合理的に生きていて、“正しい理屈”を持って行動しているしかしこの合理性は、それぞれ個人の認識能力や立場、情報の量や質などによって限定的なんだ。経済学においては、この視点から経済の動きをどう見積もるかって話につながっていく。

ただ、この概念が僕にはとても興味深かったので、その概念から浮かんだ経済とは全く関係ない話をしようと思う。

山田君 ちょっと何言ってるか分かんないです。

博士 説明しよう。山田君は世の中で理解出来ない人っていないか?

山田君 いっぱいいますよ。

博士 例えば?

山田君 今、一番理解できないのは営業の連中ですね。うちの会社は大手企業からwebサイトやwebシステムを受注して作ったりしているんですが、営業が安易にクライアントの要望を受け入れ、こっちに無理難題を突きつけてくるんです。納品までの時間がなかったり、ほとんどシステムの構築が終わってたりするのに、「ここをちょっとこういう風に変えてくれ」って営業がしょっちゅう言って来るんですよ。いつも、そういう要望は断ってくれって言ってるんですが、やつらは「それくらいヤレや!こっちも妥協してるんだ!」とか言いやがるんですよ。

博士 それだ、それ。営業も技術者も互いに自分が合理的だと思っている。でも実際には、その合理性はそれぞれの立場や手に入れる情報によって限定されている。それ故に相手を理解出来ない。

山田君 奴らはまったく合理的じゃないですよ。

博士 まあ、ききたまえ。男女の関係でもこういうことは起こる。
例えば、男はその性質として仕事モードから家庭モードに切り替えるのに時間がかかる。だから会社から帰ってきたら、しばらくぼんやりとしていて、徐々に家庭モードに切り替わっていく。一方女性は、仕事でのストレスなどを、誰かに話す事で発散する傾向があると言われている。すると次のような事が起こる。
仕事から帰ってきて、話もせずにテレビを観ている夫に対し、妻がたくさん話し始める。夫は心ここにあらずで、適当に答えるだけだ。すると妻は「私のことなんてどうでもいいの!?」とストレスを貯めていくわけだ。それぞれ自分なりの理屈でリラックスしようと思っているだけなのに、ケンカになってしまう。

かつて芸能界でアグネス論争なんてのがあったが、君は知っているか?

山田君 いいえ、知らないです。

博士 1990年頃の話だが、アグネス・チャンが生まれたばかりの自分の子どもを連れて、テレビの収録にやってきたんだ。このことがマスコミに取り上げられ、作家の林真理子などから「周りが迷惑する」「プロとして甘い」などと批判された。

山田君 確かにテレビの現場に赤ちゃんがいるのは問題かもしれませんねえ。

博士 だが、アグネスの故郷、香港の芸能界では当たり前のことらしい。しかも彼女はテレビ局から「早く復帰してくれ。子供を連れてきてもいいから」などと説得をされていた。彼女としては当然のことを、順当な手順を踏んでしただけだったんだ。この騒動はその後、社会学者の上野千鶴子などアグネス擁護派も現れて、結構長引くことになるんだが、これもまた、批判する側、される側がともにそれぞれの合理性に従ってものを言っていた例だろう。

先ほどの山田君の話を聞くと、小林幸子夫婦と元社長の関係を悪化させた原因のひとつが、ここで言う限定合理性と関係していると僕は思っている。

山田君 お互いが合理的と思っているんだけど、それが勘違いだってことを知らないから、分かり合えなかったってことですか?

博士 ちょっと違う。勘違いではなく、お互いの立場において本当に合理的なんだよ。会社経営者である林氏には、林氏なりの経営論があるだろう。それに照らし合わせた時に、元社長の経営の仕方は信じられないほど酷(ひど)いものだったのかもしれない。それは元社長にとっても同じで、芸能界の外から来た林氏の考え方は意味不明なものだったのかもしれないな。双方に悪気はなくても、そうしてお互いに理解できないまま、対立を深めていったとも考えられるんじゃないかな。

山田君 なるほど~。博士の言う限定合理性ってのは分かった気がします。

でも、さっきから思ってたんですけど、そんなの腹を割って話せばいいじゃないですか。お互いの合理性に限界があるなんてことは、話し合えば分かりあえると思います。

博士の話によれば、それぞれにきちんと合理的な考え方があるってことですよね?社長と社員も、夫と妻も、幸子夫婦と元社長も、ちゃんと話せばお互いに認め合えますよ。『みんなちがって、みんないい』って金子みすずだって言ってるじゃないですか。

博士 そこだよ、山田君。腹を割って話し合えばいいというが、そう簡単にはいかないんだよ。我々は自分と違った考え方を受け入れる事ができないように出来ているんだ。

山田君 ええ!?どうしてですか?

博士 これは、TEDカンファレンスで行われたキャサリン・シュルツというジャーナリストの講演を聞いて気づいたことだ。

山田君 博士の話にはTEDカンファレンスがよくでてきますね。

博士 キャサリン・シュルツの「間違えるという事」という講演によると、我々は幼いころから、親に何が正しいのかを教えられ続けてきた。箸の持ち方にしろ、字の書き方にしろ、あるいは家の壁に落書きをした時にしろ、全てにおいて親の意に反することをすれば、それを「間違い」と怒られ、「正しい道」に修正されてきた。

その結果、我々は、世の中には「間違っていること」と「正しいこと」の二つしか無いという強い固定観念を持つようになる。正しい事は世の中にひとつだけあり、それ以外は間違っていると信じるようになるんだ。

山田君 ふむ。

博士 固定観念は、小学校に入っても強化される。テストで間違った答えを出せば、×がうたれるし、授業中の態度が悪ければ「それは間違っている」と怒られる。そうなることで我々は、間違っている事は悪いことと思うようになる。そして、「この世界で成功するには、間違いを犯さないことである」と信じていく。キャサリン・シュルツは9歳にもなれば、おおよそみんながそういう考えを持つようになると言っている。

そして、自分が信じる唯一の「正しい」に反することをしている人を見ると、「あいつは間違っている、ゆえに成功しないし、愚か者だ」と自然に考えるようになるらしい。

山田君 なるほど。

博士 キャサリン・シュルツはその講義の中で、こんなことを言っている。
そのようにして育ってきた我々が、自分の「正しさ」が相手に理解されない時――つまり、相手が自分に反する考えを持っている時、どう思うか。それは次の3つのステップで進んでいく。

第1のステップは、「この人は知らないから正しいかどうかがわからないのだ」と思う。
だから、自分と同じ情報を共有すれば、自分の正しさを理解してもらえるだろうと考える。山田君の例で言えば、「技術の人間がいかにクライアントの急な要望に答えることが大変か」を丁寧に伝えるという作業をするということだな。

山田君 確かに、やつらに何度も伝えました。

博士 だが、情報を共有しても相手が考えを変えない場合、第2のステップにはいる。それは、「この人はバカなんだ」と思うってことだ。

山田君 バカだからちゃんと情報を共有しているのに理解できないんだと解釈するわけですか。確かに技術の一人は、「営業の奴らはバカなんだよ」が口ぐせです。

博士 そうだろう。だが、「バカなわけがない」ということもあるよな。相手がきちんとした実績を持っていて、優秀であることは間違いないという場合だ。そんな場合、人はどう思うか。
それが第3のステップ「この人は、悪意があって意図的に私を苦しめている」と考えるようになるってことだ。

山田君 あっ、なんだかそれって、小林さん夫婦と元社長の騒動に当てはまるような……。

博士 するどいな。そう、小林幸子のお家騒動が泥沼化した背景には、この3ステップが潜んでいる可能性があると僕は思う。

林氏は小林幸子の仕事ぶりを見て、自分の経営理論と照らし合わせ、事務所の運営について色々な改善すべき点を感じただろう。そしてそれを元社長らに伝えた。経営学の説明なんかをしたかもしれないな。だが、彼女は理解してくれない。「この人、バカなんじゃないか」と思っても、芸能界で信用の厚いやり手社長だ。バカなわけがない。そこで、相手の悪意を疑いはじめるわけだ。
「経営に後ろ暗いところがあるんじゃないか」とか「自分を経営に参加させたくないから、正しい意見を認めないんじゃないか」とかな。

山田君 そういえば、今回の騒動の中に、小林幸子さん側の弁護士が「退社にあたって慰労金を支払うが、小林幸子についてネガティブな情報を流さないよう見届けてから分割で支払う」なんて条件を出したって話もあるんですが、これが解雇された元社長側をより怒らせたんですよね。

博士 それについても、「この人には悪意があるから、事務所を辞めたら週刊誌にネガティブな情報を流すかもしれない」と考えたのかもしれないな。そう考えると、その失礼な分割払いの提案もそれなりの理屈があって出てきた話かもしれない。

山田君 報道を見る限りではめちゃくちゃなことを言っているように思えましたが、それなりに小林さん夫婦の方にも理屈があるわけですね。

博士 まあ、あくまで想像だがな。こんな可能性もあるだろうという話だ。
同様に、元社長側も林氏の経営上の提案なんて素人のたわ言に聞こえただろうし、「分割払い」なんて超理不尽だと感じただろう。結果、そこに悪意を感じ、そんなものに屈したくないと今頑張っている最中なのかもしれない。

山田君 そうして泥沼化し、僕らは今年の紅白で小林さんの豪華衣装を見られないかもしれないと。本当にそうなら残念ですね。そんな限定合理性と、『みんなちがって、みんないい』が分からないという罠から抜け出すことはどうしたって無理なんでしょうか。

博士 完全に無理というわけではないと思う。
例えば、アメリカの離婚率は1970年代から80年代初期にとても高かった。が、最近は下がってきているんだ。AP通信によればピークである1981年には人口1000人あたり5.3組だった離婚が2007年には3.6組に下がったそうだ。さらに厚生労働省の資料によれば、2010年の調査ではさらに3.4組に下がっている。

山田君 アメリカと言うと離婚大国のイメージがありますけど、離婚は減ってるんですね。

博士 その理由の一つに男と女では考え方が全く違うということが認知されてきたからということがあると思う。アメリカを始め全世界で大ヒットした『話を聞かない男、地図が読めない女』なんてのもあっただろう。『ベスト・パートナーになるために―男は火星から、女は金星からやってきた』という本を書いたジョン・グレイはこの分野で3000万部以上の本を売っている。こういった分野が発展し、本などによる啓蒙が行われたことで、男女がお互いに限定合理的であることと、『みんなちがって、みんないい』という発想が普及したのではないだろうか。

もう一つは、タラ・パーカー=ポープ著『夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか』によれば、初婚年齢が上がったことで離婚率が下がったという。人は歳をとることで、ある程度『みんなちがって、みんないい』が分かるようになる。

山田君 幸子夫婦と元社長は歳をとっても無理だったみたいですね。

博士 それは、キャサリン・シュルツに言わせれば、「優秀であればあるほど、他人の間違いが理解出来なくなる」ということと関係しているかもしれないな。その人が優秀であればあるほど「自分は間違ったことをしていないから成功した」「自分は間違いを正していった結果成功した」という観念にしばられやすくなるようだ。

山田君 たしかに、幸子さん夫婦と元社長は両方とも優秀で、成功していますよね。

博士 だが、多くの人は年齢と共に、他人が正しいこともあるということが挫折や失敗ともに理解出来るようになり、許せることの幅も増えてくる。
要は、自分と相手は違っていて当たり前でどちらかが正しいというわけではない、相手の理屈も受け入れるべきだという発想を持つことができれば、僕が言う限定合理性を理解し、『みんなちがって、みんないい』が分からないという罠に陥らずに済むかもしれないということだ。丸くなったってのがそうかもしれない。

これが前回述べた、人がお互いに理解出来なくなるロストイントランスレーションが起きるもう一つの理由と、そこから抜け出す方法だ。

山田君 よーし、わかりました。それを今度、ウチのバカ営業どもにも言ってやりますよ!「お前らは自分が正しいと思ってるみたいだけど、それは限定合理性の罠に囚われてるんだよ」ってね。

博士 ……山田君。君は今まさにその罠にはまっているんだよ。


今回の勝手アドバイス
限定合理性と自分の「正しい」以外は間違っているという固定観念から抜け出せなければ、人は不毛ないがみ合いを続けることになる。

恋の悩みを相談してみませんか?

恋愛ユニバーシティでは、無料でお悩みを相談できる掲示板があります。「片思いを成就させたい!」「どうしても復縁したい!」「彼と結婚に至るには?」など、さまざまな恋愛のお悩みを受け付けています。
相談には、恋愛や男性心理を知る当サイトユーザーが回答し、解決方法をアドバイスします。

掲示板に相談を投稿する ( 無料 )

「悩みを公開したくない」「すぐに回答がほしい」という方は、「電話・メール恋愛相談」をご利用ください。実績のある恋愛カウンセラーや専門家が、あなたのお悩みに答えます。

電話相談ができる専門家を見る

初めての方へ
会員登録
閉じる
必須です 3文字以上必要です 16文字以内にしてください 半角英数字のみです 既に登録済みです
OK!
必須です 6文字以上必要です 16文字以内にしてください 半角英数字のみです
OK!
必須です 3文字以上必要です 16文字以内にしてください
OK!
必須です 正しいメールアドレスを入力してください 既に登録されています
OK!
「利用規約に同意する」にチェックがありません
OK!
簡単ログイン -外部サービスでログインもできます-
Facebook Twitter Google+ LINE
簡単ログイン -外部サービスでログインする-
Facebook Twitter Google+ LINE