僕の高校は年に1回東京で集会がある。もう80才以上の先輩も去年卒業して上京したての若者も集まる。
久しぶりに参加したその集会である一人の女性に会った。彼女は同級生で「むっちゃん」と呼ばれていた。久しぶりのその同窓生に挨拶しながら、高校生当時からほとんど変わらないその容姿・体型に驚きながらも、僕は「むっちゃん」とお互いに軽い挨拶を交わした。お互い顔は知っていたと思うが実は彼女とは一言も話したことは無い。
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高校2年の秋だった。それまであまり口を利いたことの無かったOが話しかけてきた。
「あの天然パーマの子と楽しそうだな」
僕は当時吹奏楽部でクラリネットを吹いていたがその一年下の後輩と付き合っていた。付き合っていたといっても自転車で途中まで一緒に帰るぐらいのもので、博士の定義からするととても付き合っていたとは言えない。デートも一度だけ、そんな関係だった。
Oは学年一のモテ男だったが、噂では当時付き合っていた同級生の彼女と別れたらしかった。ただそのわずか1か月後に別な同級生とつきあっていた。二人ともとてもかわいく僕の認識では同級生1, 2位を争う人気の女の子の間を渡り歩いたように思えた。それほどかっこ良くモテる男だった。
なぜOが僕に話しかけてきたのか最初は分からなかったが、どうも後輩と付き合っている僕が羨ましらしかった。同じ学年だといろいろ面倒くさいことがあるのだろう。だが、正直自業自得だと思っていた。
「TOP2の二人と付き合えてるんだから贅沢言うなよ」
本音だった。実際二人はとてもかわいく、僕には高嶺の花だった。
「まあ、そう言われればそうだけど・・・ミキ(別れた彼女)と別れたときはつらかったなぁ・・・・・あっ、でもTOP2っていったけど、一番人気あるのは二人じゃないからね」
えっ、正直びっくりした。Oが付き合った二人は飛びぬけてかわいかったからだ。誰、と聞く僕にOが教えてくれたのが、あの「むっちゃん」だった。
むつみ、というその女の子の正体が僕には分からなかった。無関心というレベルではなく、存在自体知らなかった、というのが正直なところだ。次の日から僕は男女問わずそれとなくむっちゃんのことを聞きまくった。みんながみんな、彼女のことを褒めまくった。かわいい、いやされる、やさしい。
女性からも圧倒的な人気だったのには正直驚かされた。
彼女をその「むっちゃん」と意識して初めて見たとき正直がっかりした。ああ、そういえばあんな感じの子いたっけ、ぐらい感じ・・・一言でいうと地味だと思った。美人ではなかったし、かわいいかと言われれば正直?がついた。割と小柄で童顔なわりには胸が大きくスタイルが抜群に良いのは感じた。おだやかな性格もなんとなく伝わってきた。正直フランス人形のようなぱっちりした目の僕の彼女の方がかわいい、と思った。
水泳部だった彼女の水着姿はとてもまぶしい、らしかった。来年の夏まで楽しみはとっておこう、そのときはそう思ったが、次の年も忙しさにかまけ、水着姿を拝むことはなかった。僕の記憶から「むっちゃん」は完全に消えていった。
大学受験に失敗した僕は東京の予備校に通いながら勉学に励んでいた。だが案の定ちょっと遅いホームシックにかかり、特に6月後半から7月にかけて最悪な精神状態になっていた。良くあることだ、みなも経験があるだろう。下宿先の高円寺から予備校の御茶ノ水の間の電車が苦痛だった。夏に近づくにつれて華やかな浮かれた雰囲気が漂うにつれて憂鬱さは増していった。
そんなある日電車の窓からふと見えた神宮外苑のプール(今はフットサルコートになったのかな)に心が動かされた。まだ人は疎らだったが華やかなその雰囲気がたまらなかった。電車の窓からちょうど正面に見える形で観客用のベンチがあり、そこで水着の男女が寝そべっている光景が目に焼き付いて離れなかった。
毎日その光景を見ていた僕は、ある日水着を買い、追い込まれた気持ちを振り払う用に千駄ヶ谷駅を降り、そのプールに向かった。
もともと泳ぎが得意だった僕は大いにプールでの息抜きを楽しんだ。あちらの世界は華やかで楽しかった。美しい女性の水着すがたも目の保養になった。が、やはりどこかもやもやとした感情が残った。勉強をさぼっているという罪悪感もどこかにあったのだろう。それでも僕は週に一度は神宮に出かけた。精神的にも大分良くなってきたころだった。観客席のベンチに横になっていた僕の10メートル先を一人の女性が横ぎった。
むっちゃん、だった。
その瞬間体の中にある重いものが全て取り除かれて、身も心も軽くなる、そんな感覚が僕を襲った。とても美しくまぶしくそして周囲になんともいえないいい香りを漂わせるそんな感じ・・・抜群のスタイルと背筋がしゅんとした姿勢、わずかにたたえた微笑み。完璧だった。彼女は天性の癒しのオーラを身にまとった女性だった。外見だけでは説明のできない、何か不思議な力を持っている、そう感じた。
今まで僕の中に眠っていた何かがよみがえった。正体不明の重みがとれ、自分の存在の真ん中に芯ができたような気がした。
がんばろう
今やるべきことを精いっぱいやろう
そしていつかあの「むっちゃん」のような最高の女性を手に入れよう(男にとってこれ重要)
その後も僕は神宮に向かい「むっちゃん」も何度か見かけた。遠くから見るだけだったが、それでも僕は嬉しかった、そのたびに僕のやる気は増していった。何よりも彼女を見たあとの帰り道は未来が輝いて感じられた。
完全に立ち直った。スランプから脱出し、そこからは精神的に参ることはなかった。
翌年から僕は第一志望ではなかったが大学生活を満喫することになる。むっちゃんとは結局一言もかわせないままその後会うこともなく年月だけが流れた。
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同窓会でもむっちゃんとは一言も話さなかった。あのときのままの童顔、そして抜群のスタイル、彼女は年齢をも超越していた。なんでも高校時代がからつきあっていた水泳部の彼氏と結婚し幸せな人生を送っているとのことだった。彼氏がいるというのが潜在意識に会ったのだろうか、彼女に対しては意識的な恋心は無かった。ただただ、存在自体が僕にとっては憧れだった。
「あのときは本当にありがとう」
心の中でつぶやき、僕は会場を去った。
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人は存在するだけで人を幸せにできる。人の人生を良い方向に向かわせることができる。自分が存在することで人が幸せになれたら、希望を持てたらどんなにうれしいことだろう。
逆の場合もあるだろう。そう人は存在するだけで人を幸せにも不幸せにもできる。互いの関係の中で存在意義がある限り、人としての宿命だろう。
人に影響を与えることが不可避な存在ならば、自分の言動で人が傷つくのに気をもむのはやめ、人にプラスの影響になるように集中する、今も僕の中のコアにある何かを生み出してくれたのは「むっちゃん」の存在だったと今なら思える。
今でもそこにいるだけの女性に心が癒されることがある。特にこの時期、夏に向かうこの時期にそう感じる。通勤の満員電車の中でも、都会の雑踏の中でも、コーヒーショップの中でも、どこにでもそういう存在するだけで心が癒されるそういう女性がいる。そのたびに心の中で感謝するんだ。
「幸せな気持ちにさせてくれてありがとう」
きっとこの思いは巡り巡って彼女の幸せに微々たるものであれ貢献できているのではないかと感じる。僕のほかにも同じように感じている人がいるなら、そういう人が多ければ多いほど彼女は幸せになっていくのではないか、そう感じることがある。
恋に悩む君も、彼のことばかり考え彼のことだけに時間を使うのではなく、君自身が赤の他人にでさえ幸せを与えられるようなそんな存在になってみませんか?
彼からのラインやメールの返信を待つその時間を何かもっと別なことに、そう存在自体人に喜びを与えられるようなそんな自分になるような努力に使ってみませんか?
たまにでもいい、そういう時間を持つのはどうだろう?
少しずつ・・少しずつ・・
今日は関東は天気がいい。
スマホを置いて町に出たらどうだろう。君の美しさで一人でも多くの人間に幸せをばらまいてみてはどうだろう。いや美しさだけではない、やさしい言葉、さりげない気遣い、それでもいい。コーヒーショップで本を読むその姿にあこがれを感じる女子高生がいる、電車の中で窓の外を微笑みをたたえている君を見て心癒されるGさんがいる。君のやさしい笑顔に喜ぶ子供がいる。
周りに与えた幸せがどこかを伝わって彼に伝わるかもしれない。いや、彼以上の誰かの心を動かすかもしれない。うん?見返りを求めちゃいけない? いいじゃないか少しぐらい。そのうち、赤の他人から返ってくる笑顔が病みつきになるから。そのたびに君は美しくなっていく。自信がついてくる。
今日は僕も町に出よう。新宿のど真ん中のお気に入りの某店のテラスでポジティブ心理学を片手に思いっ切りすかしてみよう。ときどき目の前を通った人に軽く笑顔を振りまいて・・・100人に一人ぐらいポジティブな感情が生まれてくれたらそれで御の字だ。気持ち悪い?知らんがな ^^
もちろんスマホは置いていくよ、僕はね ^^/
不便? うんにゃ、不便だって死にやしねーよ
▼ コメント(9) - 新しい順
- まことさん、おはようございます。
>>そういう女性になりたいと思いますが、なりたいと願っても難しいものかしら?
難しいかもしれませんが、全ての女性に(男性にも)可能性はあると思います。
>>ジムに行ってる最中は携帯を見る暇がないです♪
まさにその瞬間、誰かを幸せにしてるかもしれません 笑 - 風の旅人様
コメント失礼します。
むっちゃんさん、素敵です。
私の理想とする女性像の一つです。
そういう女性になりたいと思いますが、なりたいと願っても難しいものかしら?
ジムに行ってる最中は携帯を見る暇がないです♪ - Vitzさん、
>うっかり携帯を忘れるVitzです♡
いいですねぇ ・・・ 忘れても意外となんとかなるもんですよね 笑
Vitzさんはきっと知らないうちに幸せを振りまいている女性のような気がします。
確かに太陽は悩みがなさそうです。悩みが無いから周りを照らせるのか、周りを照らしているから悩みがないのか・・・
どちらなんでしょうね。 - ちゅるりさん、
感動しましたか・・・嬉しいです。
今日はテラスでサンドイッチ食べながらのんびりしてました。隣に2匹の犬を連れた(なんかもこもこの犬)本ものの(笑)Gさんがいましたが、人が集まるは集まるは。同じ犬の散歩仲間やら、中国か台湾の観光客やら、小学生やら・・・
ちなみにその犬やたら僕の足に絡みついてきました。とりあえずワンコには幸せな気分を分け与えられたようです。 - レベッカさん、
Gさん、ツボちゃんたんですよ 笑
なんか表現がかわいくてね・・・さすがアミィ姉さんです。
今日はおかげで読みたい本じっくり読めたし、書き物もいくつかこなせました。
まじめに捨てちゃおうかな 笑 - 今日は日記に書いた通り一日スマホを持ち歩かなかった。
しかし じ、じ、時間が分からなーい
という落とし穴が。だがそれもまたいいかな。どうしても必要なら近くの人に聞けばいいし。
でスマホが無い時間があまりに心地いいので明日も持ち歩かないことを試してみようと思います。良く考えると仕事にも大して支障がないかも・・・
このまま捨てちゃおうかな・・・旅人にスマホは似合わんだろうし 笑
ちなみに今回の日記のむっちゃんは
http://u-rennai.jp/diary/detail/42844/
で言及した女性です。
って今気づいたけど、全然コメントに返事書いてね~~~ - うっかり携帯を忘れるVitzです♡
誰かとの恋が始まるときも
そういえば…
ぼんやり過ごすひとときから
不意に【彼】になる男性から
アプローチされる。
パターンが多かった気がします。
太陽って悩みなさそうですよね☀
- 感動しました(∩´͈ ᐜ `͈∩)˖*♬೨̣̥
本当は当たり前の事なんでしょうね。
人は存在するだけで人を幸せに出来る。
忘れがちになって自信を失うのかもしれません。
天気のいい気持ち良い朝に素敵なお話ありがとうございました(^^)
仕事頑張ります! - とてもとても素敵な日記で、うんうんと頷きながら拝見してたら、、
さりげなく「Gさん」が紛れ込んでいるのに吹き出してしまいました(笑)
お茶目ですね(*^^*)笑
でもホントに、そんな太陽みたいな存在になりたい。人を選ばずに周りにいる人を照らす、あたたかくする、幸せにする。そういう女性に。
私も今日はスマホを置いて街に出ます!
素敵な日記をありがとうございます♡
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