だるま君が律っちゃんにプロポーズする時の言葉『おやじが僕に言ってた樫の木のような男になれっていうのはちんこのことだけじゃないんだぜ。樫の木のような太くて丈夫な心を育てて、大人になったらそれを伐って家を建て、かみさんと子どもをそこへ住まわせてやるこった。そう言ってたんだ。律っちゃん、僕のおかみさんになってください!』が最高に好きです。そしてその後に律っちゃんに嫌な顔をされて、もう一生下ネタは言わないから、と約束するところも好きです。
下ネタをうっかり甘えて言いたい欲求を凌駕する愛ってすごいなーと思います。そして本当にだるま君がそれ以来下ネタをまったく言わずに8年が過ぎたので、今度はじょじょに律っちゃんのほうが自分から下ネタを解禁していく気配が出てくる、という構成が愛の歴史を感じさせて、あぁ、ふたりの心の樫の木が育っているんだねえと、だるま君グッジョブと涙を零してしまいました。
だるま君は律っちゃんが結婚してくれなかったら人生が破綻していたんだ、というのはとても納得しました。
そして船山さんはどうやったらレイプしないですんだんだろう?と考えてしまいます。
律っちゃんのように記憶の牢獄のなかに暮らすことになって、そこで年月が過ぎて、その中で子どもを育て、その中で年を取っていく連れ合いと、またいつか別れるその時も自分がいるのはこの牢獄の中なんだと、自分の苦難を受け入れようとして、やはりできなくて苦しい。それは読む私には自分のことのようでした。どっちかというと私は船山側の人間ですけど…。
だるま君は律っちゃんの牢獄の中に一緒に入ってくれたいいやつだなぁと思います。
でも、私はだるま君と一緒にはいたくないと思ってしまいます。なんでだるま君がここに入ってくるのと思ってしまいます。
律っちゃんはきっと混乱の中にずっといるのに、考えたり決めたり実行したり、すごいです。
船山には支配できなかったんだなぁって。
支離滅裂の極みのような文になってしまいました。すみません。こんな感じで幸福感があるんだけれども、複雑で自分が何人もの自分にわかれてあっちこっちで好き勝手に議論しているような感情の感じになって、いつの間にか泣いたりしています。情緒不安定なのかなぁとも思いますが、泣いたらとても元気になっているので大丈夫だと思います(笑)。
吉野先生にはいつも心の糧をいただいています。ご丁寧なお返事を本当にありがとうございます。お忙しいとは存じますが、どうか大切なお身体をおいといくださいますよう、お願い申し上げます。
追伸 樫の木のように硬い文章になってしまいすみません。』
シロが夕食にかちかちのフランスパンを出してきた。
「なんなの」
「別に」
『吉野先生こんにちは。ご無沙汰いたしております。先生とのお約束通り、三度の遣り取り毎にひとつ、小説を書き上げて添削をしていただくということで、ワードのファイルの中に30ページの短編を入れてメールに添付いたします。よろしくお願いいたします。お忙しいことと存じます。全然だめということであればうっちゃっておいてくださいませ。
せっかく読んでいただける(かもしれない)のに生意気ですいません。自意識が爆発しております。
ご厚意に甘えてのこのことマジで原稿を送ってしまいました。
先生、この世に誕生してくださりありがとうございます。もはや小説じゃなくて祝詞のようなもんだと思ってご笑覧いただけたらと思います…。
そして質問もまたさせていただきたいと思います。今日の質問はひとつです。
吉野先生のエッセイにはよく先生の奥様が登場されますが、先生の奥様はどんな方ですか?
答えるのが嫌だったらいいです。
なんか「デヴィッド・ボウイのようなまなざしでバーゲンを一瞥し、しかしその一瞬後には意を決してその中に飛び込んでいったのだった」とか「おっぱいを揉め揉めとセクハラしてくる」とか「映画は時かけ以外観ない」とか、面白そうですがよくわからないので。
私ははっきり言って吉野先生に陽性転移を起こして擬似恋愛感情を抱いているので、お手数ですが私ががっくりと失恋するような、そういう感じの奥様の描写が読みたいです。(趣味です)
この質問はよくないかもしれないので、代わりの質問を用意しておきます。
自分の子どもがいたとして、その子にどうしても教えておきたいことをひとつ教えて下さい。
これも嫌がられるかもしれません。嘘を教えて下さっても大丈夫です。よろしくお願いいたします。暑い日が続きますので、ご家族の皆様ともども、お身体をお大切にお過ごしくださいませ。』
ひと月のちお返事が来た。
『こんにちは。お変わりありませんか。いつも楽しい手紙を妻と一緒に楽しみに読ませてもらっています。お元気そうな様子を想像して、こちらも元気になっています。どうもありがとう。
課題の短編『悪夢の姫君』を読みました。思春期の女の子が自分の悪夢の中にしか現れない美しい男の子に恋をしてしまうという筋はよいと思います。
短編ということもあり、夢の中の肉体のふれあいの不安に満ちてなおかつ隅々まで水気がいききらめくような様子の描写を、もっと深くなまなましく読みたいし、官能小説の醍醐味は気がついたらそこに沈み込んでいる自分がいた、顔を上げたら文庫本やハードカバーからざばっと頭が上がって、激しく呼吸を取り戻しながら、水にひたひたになって息をするのも忘れていた、自分の中にはそういう自分がいたと気がついてしまうような感じだと思うのです。
僕の奥さんが横から覗き込んでキーボードを打ってくる…。
まんこを活用せよ
ちょっと本当にすみません。でも名言だと思うんだよなあさすがはうちの奥さんだわ。めっちゃ好きなんです家内のこういう所が。
まあそういうことだよね…。水を出すのは君ですよってことだよね…。僕も水芸はやるけどね?すいませんほんと。
なかなかよかったです。ぶっちゃけ家内も僕も結構興奮しました。あと言えることがあるとすれば、成就というのはなんなのかということです。
自分が死に、夢の中の彼も心中のように死に、しかし読後にその心中に見合うほどの達成感や甘美な感じ、世界に閉じこもって死んでやったぜ的なやってやった感はほとんどなく、せっかく二人も死んでるのに作者の目が死んでるのはなぜ、という感じです。
『あたしの自分勝手で殺してやるのだ』じゃないですよ。心が通じ合うから小説のセックスは現実を凌駕して美しかったり気持ちよかったり優しかったり悲しかったりするのです。
自分勝手じゃいけません。
僕らは現実世界ではいくらでも非情で意地悪で自分勝手な動物の行いをするのだから、そこから逃れられないのだから、小説の世界では心ゆくままに良心や美しさや優しさや官能を表現したっていいと思うのです。
それがあなたの真の望みなら、小説の中でのどんな極悪非道もいいと僕は思うけど、こんな投げやりな結末では、とうていこの死があなたの望みとは読めない。
この2人は死んではいけない。
僕が言うのはおこがましいけど、作家になりたいのなら、この2人を死なせず、次元を超えてもこの2人が生き残って出会い、共に生きて幸せを模索する道を死ぬ気で考えてやるのが親の務めってものじゃないのかね。
熱くなってしまいましたが、僕が子どもに言いたいのはそういうことです。
隣で奥さんが潤んだ目で僕を見ているので、いけそうな気がする。
ありがとうございました。お返事は下さってもなくても大丈夫です。本当にいつも楽しい返信をありがとうございます。結末を変えるというか長編にしたら?というのと、エロが足りねえというのと、それにしてもよく出来た短編だと思いちょっと嫉妬なので、大賞はとれないと思いますが(かわいがり)短編の官能小説の賞に送ってみることをおすすめします。
彼が基本ヌメヌメしてるのよかったよ!と奥さんが言っています。』
『ありがとうございました。吉野先生の勃起感がフルに伝わってくる内容で打ちのめされました。まんこ…活用します…。長編…。
とりあえず賞に送りますんで!かわいがりはやめて下さい。
あと俺の官能小説を夫妻で読むのはやめて!嘘です嬉しかったです。奥様ありがとうございます。まんこ活用していきたいと思います。吉野先生、熱いメッセージをありがとうございました。
これからも末永くお幸せに…(唇を噛んでいる)』
昼食はじゅんさいとなめこと納豆と炊き野菜のあんかけと天津飯だった。
「おやつはみたらし団子だよ」
「なんなの」
「別に」
▼ コメント(6) - 新しい順
- それはやっぱwonder.2さんに(逃げ)
あとちょっと、わたしがスッキリしなかったのは、
>だるま君は律っちゃんが結婚してくれなかったら人生が破綻していたんだ
「律っちゃんでなければいけなかった」ということを言いたいんだろうな、とは思うんだけど、
彼の「健やかさ」が破綻してしまうほどの人生、というのが、逆にうまいこと想像できなくて。
破綻、破綻、破綻で、いいのだろうか?
などなど(笑)
あー、次が読みたいっ! - mamiしゃんなにそれっ?
- りりたん、横ですが、
小説=小なる説、と習いました。(∩´∀`)∩ - 吉野先生のご夫婦のやりとりめちゃ面白い。
私は小説を読解する能力がないのだ、となんだか気づかせてくれた作品でした。
薄々知ってましたがwww.
小説ってなんなんだろう? - こころが洗われるような、
とても清らかな、
優しい気持ちになりました。
なろうと、思いました。
連作「白雪姫のおべんとう365日」の一篇とうからには、
白雪姫は「これから目覚める(べき)女性」なのでしょうか?
愛の力で。
>僕は律子にどうしても生き残ってもらいたかった
>律子がだるま君と結婚しなければだるま君の人生は破綻していた
>世界は船山の思うようなものではありません。律子もだるま君も自らの人生との格闘を通じて既にそのことを知っているし、娘のあかりにもそう教えると思います。だから彼女たち夫婦は世界に向かって微笑むというラストシーンにしました。
>成就というのはなんなのかということです。
>せっかく二人も死んでるのに作者の目が死んでるのはなぜ、という感じです。
>こんな投げやりな結末では
>作家になりたいのなら、この2人を死なせず、次元を超えてもこの2人が生き残って出会い、共に生きて幸せを模索する道を死ぬ気で考えてやるのが親の務めってものじゃないのかね。
全体が、一言一句、句点読点まで考えられているのかなー。
何度も読みました。
明日もまた読みます。 - 面白いです!
続きは待ってても良いの?
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