確か３年ぐらい前の事だったろうか
海外出張の帰り、成田から最寄り駅、そして家までバスで帰る車中でのことだった。なれたもので海外出張でもかばんひとつ、その黒いかばんを大またを開いた足のしたに置いて一番うしろの席にすわった。
5人がけの席のなか僕の大また開きのせいで、やっと座れるぐらいの最後の席に最後にサラリーマン風の男性がすわった。迷惑そうに僕をみて、思いっきり足を押し付けていた。僕はかばんのせいで足を縮めるわけにもいかず、ごめんなさいと立つこともできず、ずっとそのままでいた。
自宅の最寄りのバス停に近づいたところで僕は席を立とうとした。鞄をえいやっと持ち上げたとき、となりのサラリーマンがびっくりしたように僕を見て、足をさっとよけてくれた。軽く目で挨拶をしドアに向かおうとしたとき、彼は僕にすまなそうに頭を下げた。
彼の目には黒い鞄は見えていなかった。
わけもなく大股を開いて席に座っている偉そうな中年のオヤジが、その黒い鞄の存在が分かった瞬間、大きな荷物を持った仕事帰りの頑張っているビジネスマンに見たのだろうか・・・
つい先日はこういうことがあった。
休日の私鉄の電車の中だった。そこそこ混んでいる車内に乗り込みドア寄りに背を向けて吊革を握った。だがドアそばの男と背中があたって居心地が悪い。振り返って彼を見るとドアから離れて立っている。「もっと詰めろよ」と心で叫ぶ。電車の中ではよくあることだ。電車が揺れるたびに背中が当たる不快感に耐えながら、目的の駅にひとつ手前の駅で彼は降りた。背中の圧がとれホッとし振り返った瞬間、すべてが分かった。彼がドアからスペースをとっていたそこにはベビーカーがあり、赤ちゃんが寝ていた。母親らしき女性がすぐわきベビーカーを支えていた。
僕が不愉快と感じたその男性はドアが開いて殺到してくる乗客からベビーカーを守る盾になっていたのだ。
ベビーカーを見るまでその事実に気づかなかった。とても気まずい思いをしたものだ。
fukuponさんの日記「愚痴です。長文です。」を読んでまっさきに僕が思ったのは、こういうことだ。
「この話で僕が見えていない、黒い鞄やベビーカーはなんだろう」
多くの理不尽な出来事には何か僕らには知り得ない事実があり、それがために僕らは不愉快になる。だかその知り得ない事実が見えた途端、同情したり、共感したり、自分の無知を恥じたりするものだ。
もしかしたら「黒い鞄もベビーカーもない」かもしれない。単に不愉快な人間が起こした理不尽な出来事かもしれない。でも少なくとも僕は「黒い鞄やベビーカーがあるかもしれない」と想像を働かせる努力だけは怠らないようにしようと思っている。当事者になるとこれは本当に難しい。でも努力だけは怠るまい。
「見えていない何かがある」 そう思うだけで世の中の見方は随分変わってくる。
そうそう、来る学園祭でもこれに近いテーマをとりあげる。「限定合理性の罠」「現実検討能力」などだ。
取り上げる時間は短いが考えるきっかけになるはずだ。
ああもう一つ今回昼の部のセミナーでは、我々コメンテータが作った冊子を配布する。セミナー参加者限定の非売品の冊子だ。
ちょっとだけ抜き取ってご紹介しよう。欲しい人は是非参加してほしい。
海外出張の帰り、成田から最寄り駅、そして家までバスで帰る車中でのことだった。なれたもので海外出張でもかばんひとつ、その黒いかばんを大またを開いた足のしたに置いて一番うしろの席にすわった。
5人がけの席のなか僕の大また開きのせいで、やっと座れるぐらいの最後の席に最後にサラリーマン風の男性がすわった。迷惑そうに僕をみて、思いっきり足を押し付けていた。僕はかばんのせいで足を縮めるわけにもいかず、ごめんなさいと立つこともできず、ずっとそのままでいた。
自宅の最寄りのバス停に近づいたところで僕は席を立とうとした。鞄をえいやっと持ち上げたとき、となりのサラリーマンがびっくりしたように僕を見て、足をさっとよけてくれた。軽く目で挨拶をしドアに向かおうとしたとき、彼は僕にすまなそうに頭を下げた。
彼の目には黒い鞄は見えていなかった。
わけもなく大股を開いて席に座っている偉そうな中年のオヤジが、その黒い鞄の存在が分かった瞬間、大きな荷物を持った仕事帰りの頑張っているビジネスマンに見たのだろうか・・・
つい先日はこういうことがあった。
休日の私鉄の電車の中だった。そこそこ混んでいる車内に乗り込みドア寄りに背を向けて吊革を握った。だがドアそばの男と背中があたって居心地が悪い。振り返って彼を見るとドアから離れて立っている。「もっと詰めろよ」と心で叫ぶ。電車の中ではよくあることだ。電車が揺れるたびに背中が当たる不快感に耐えながら、目的の駅にひとつ手前の駅で彼は降りた。背中の圧がとれホッとし振り返った瞬間、すべてが分かった。彼がドアからスペースをとっていたそこにはベビーカーがあり、赤ちゃんが寝ていた。母親らしき女性がすぐわきベビーカーを支えていた。
僕が不愉快と感じたその男性はドアが開いて殺到してくる乗客からベビーカーを守る盾になっていたのだ。
ベビーカーを見るまでその事実に気づかなかった。とても気まずい思いをしたものだ。
fukuponさんの日記「愚痴です。長文です。」を読んでまっさきに僕が思ったのは、こういうことだ。
「この話で僕が見えていない、黒い鞄やベビーカーはなんだろう」
多くの理不尽な出来事には何か僕らには知り得ない事実があり、それがために僕らは不愉快になる。だかその知り得ない事実が見えた途端、同情したり、共感したり、自分の無知を恥じたりするものだ。
もしかしたら「黒い鞄もベビーカーもない」かもしれない。単に不愉快な人間が起こした理不尽な出来事かもしれない。でも少なくとも僕は「黒い鞄やベビーカーがあるかもしれない」と想像を働かせる努力だけは怠らないようにしようと思っている。当事者になるとこれは本当に難しい。でも努力だけは怠るまい。
「見えていない何かがある」 そう思うだけで世の中の見方は随分変わってくる。
そうそう、来る学園祭でもこれに近いテーマをとりあげる。「限定合理性の罠」「現実検討能力」などだ。
取り上げる時間は短いが考えるきっかけになるはずだ。
ああもう一つ今回昼の部のセミナーでは、我々コメンテータが作った冊子を配布する。セミナー参加者限定の非売品の冊子だ。
ちょっとだけ抜き取ってご紹介しよう。欲しい人は是非参加してほしい。
▼ コメント(5) - 新しい順
- こんにちは〜宣伝に使って下さって光栄です。
確かに事情を知ると、ガラリと印象が変わること有りますね。私も、自分のなかで勝手にストーリを作って、断定してしまいがちな人間なので、はっとさせられるお話でした。
あんな下らない日記が、風さんの手にかかると、何だか奥深い話みたいになるのがすごいですね。
流石ゴールデンフィンガーだ。
学園祭、残念ながら参加できないのですが、すごく面白そうですね！！
盛り上がって、楽しく意義深い学園祭になるように、祈念しております(^^)
※あ、ゴールドフィンガーの間違いでした。失礼しました。 - あーすごく聞きたい！けれどその日は泊まりで予定が(ToT)
たのしんできてくださーい！ - 6月の半期の棚卸しで、ケーキの在庫を少しでも削減したかったからですかね（￣□￣;）
- こんにちは。
fukuponさんの日記でニコンさんが「『なんでやねん』待ちの壮大なネタ」説を書いていて、関西って奥が深いなあと感心しただぶるです。
学園祭、応援しています。 - 風さん、人を動かすでカーネギー先生も同じ事をいっていましたよね。
子供たちを院卒する先生が大騒ぎの子供たちを見ても何も言わない。思わず「子供たちを静かにさせてくれませんか。」と文句をいったところ、引率の教員が「すみません、僕の母が亡くなったばかりで…。」
説明され、瞬時にして彼に対する印象が変わった。
っていう話だった気がします。非売り品冊子楽しみにしています。ついに、風さんに男ではないと証明する日が…！
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