ネットニュースの落とし穴(前編) AKBまゆゆの前髪がそんなに大切? webニュースが人生を破綻させる!
●渕上賢太郎(ふちがみ・けんたろう)博士
モテモテアカデミー及び夢を叶えるアカデミー主宰。数学、生命科学、行動経済学の博士号を持ち、人の心の動きを論理的に解明する。
●山田君
博士を慕う冴えない32歳。博士の教えにより、彼女いない歴=年齢だったモテない人生に終止符を打った中堅IT企業のSE。ニュースは主にネットで見る。
※この記事は、2011〜2013年までの間に、MSNのニュースサイト・ドニッチにアップされたぐっどうぃる博士の記事の復刻版です。
山田君 博士、高城亜樹ちゃんの体調が回復したそうですよ!良かったですね(※この記事は、2011年に書かれた記事です)!
博士 誰だそれは?
山田君 AKB48のメンバーで、「親に紹介したい3人組」と言われるユニット「フレンチ・キス」の一員でもあります。急性胃腸炎で握手会を欠席してたんですよ。良かったなあ、元気になって。
博士 君は偉いな。冬のボーナスが出ないかもしれないという状況で、おそらく君よりずっと稼いでいるであろう少女の体調を気遣えるなんて。
山田君 そんな絶望的な現実だから、彼女たちのけがれない歌声に救いを求めるんですよ。
それにしても、元気になったっていうニュースがヤフーニュースのトップに出るようになるなんて、彼女も人気者になったものです。感慨深いなあ……。
博士 ヤフーニューストップか。
そういえば、先日同じAKBの誰かが「前髪にこだわっていると話した」というニュースがトップにきていたな。
山田君 渡辺麻友ですね。
博士 webのニュースは、どう考えても“ニュース”ではないな。
山田君はニュースについてどう思う?
山田君 山下智久と錦戸亮が抜けることで形は変わってしまうかもしれませんが……。僕は残ったメンバーも地味ながら悪くないと思いますよ。特に人気番組「世界の果てまでイッテQ」での手越君なんて、ジャニーズであることを逆手にとって笑いにして、なかなかやるなあと感心してるんです。
博士 君は本当にwebニュースに侵されているな。
今日は、「ニュースが人を不幸にし、人生を破綻させていく」という話をする。
山田君 お願いします。
博士 いつごろからかweb上のほとんどのニュースはニュースでは無くなっている。
AKB48メンバーの一挙手一投足、韓流スターの来日に集まった人数、芸能人のブログでの発言……それらはテレビでは決してトップニュースにはならない。
延々引っ張っている島田紳助の引退騒動や、巨人の内紛なんて我々の人生に何の関係があるんだ?
山田君 は、博士、それを言ってしまうとこれまでの僕たちのやり取りは……。
博士 馬鹿だなあ、山田君は。ここで話している分にはかまわないだろ?
山田君 それもそうですよね。あはは。
でも、ネットニュースなんてPV(ページビュー:アクセス数の単位の一つ。ユーザーが見たwebページの数)命だから、そんなものじゃないんですか。さっき博士が言ったようなニュースは多くの人がクリックするから、トップに来るわけで。
PVが増えなければ広告も取れず、サイトを運営できません。
博士 そうなんだ。
だから、センセーショナルなニュースや面白おかしいニュース、ネットユーザーに人気がある事柄を扱ったようなニュースが上位に来る。
山田君 まあ、お堅いニュースばかりだと見る気が失せますからね。
「くだらねー」って思っても、○○ちゃんが激太り!って言われば見ちゃうし、かわいすぎるって言われればクリックしちゃいますよね。
博士 中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)という書籍がある。これはあるネットニュースのPV向上に大きく貢献した有名編集者兼プランナーの書いた名著なのだが、彼はその本の中で「ネットで受ける9つの項目」をあげている。全部取り上げると中川氏に悪いし、是非この本を読んで欲しいので、その中で6個くらい抜粋すると次のようになる。
1)話題にしたい要素があるもの、突っ込みどころがあるもの
2)身近であるもの、B級観があるもの。
3)モラルを問うもの
4)芸能人スポーツ関係のもの
5)エロ関係
6)美人
山田君 確かに最近のwebニュースはこんな感じです。
博士 そうだろう。ここであげていない残り3項目もそうなのだが、気づいて欲しいのが、ニュースを発信する側は、「読み手に話題にされる」という基準のみで記事を選んでいる。つまり記事作成者は完全にネットを見ているユーザーに媚びている、ということになる。
山田君 つまり?
博士 つまり、ニュースの内容を決めているのは発信者ではなく、webを見ている「バカと暇人」ということになる。
山田君 バカと暇人。これ、タイトルも凄いですね。『ウェブはバカと暇人のもの』って‥。
博士 中川氏の凄い所は、この本に感情を刺激するタイトルを付けている事だ。これってwebニュースのタイトルそのものだろう? 僕の知り合いが働いているwebサービスには、「ニュースのタイトルを考えるチーム」があり、日々強烈に読者の心を揺さぶるタイトルを考えているそうだ。
山田君 若干切ないチームですね。
博士 毎日満員電車に揺られ、強烈に読者の心を揺さぶるタイトルを考え続けるのは切ないことだが、これがwebの現状だ。中川氏の本を読むと、本当にwebを見ているのはバカと暇人だなって感じてしまう。そして、ニュースを作っている人たちは彼らに媚びているんだ。
山田君 じゃあ、webを見るのをやめた方が良いってことですか?
博士 実は、webニュースだけではない。現在我々が目に触れているもののほとんど全てが、娯楽か広告になってしまっている。
山田君 どういうことですか?
博士 テレビは視聴率。webはPV。そしてその両方が広告主なしでは存在し得ない。日々作り手は視聴率やPVをどう獲得していくかしか考えていない。考えたくてもそうできないんだ。携帯サービスやスマホのアプリも同様だ。雑誌も多くの書籍もみな似たような原理で動いている。
山田君 それは問題ですか?
博士 実は問題だ。
基本的に人は長期的にものを考える事が出来ず、周囲に影響されてその場その場で人生を選択している。
これまでは、「生きていくのに必要な情報」「生きていく上で何が重要で何がしょうもないか」「何が正しくて何が間違っているか」そういうものを社会の「常識」として年長者から若者に連綿と受け継ぎ、共有してきた。あるコミュニティの中で、100年先も200年先も、子孫たちがきちんと暮らしていけるように、長期的に人生が破綻しないように、「こうしておけば間違いないよ」という知識を「常識」として受け継いできた。
たとえば、「20代前半のうちに女性は結婚しないといけない」とか、「親の職業を子供が継がなければならない」などがそうだな。そうすることで100年後もそのコミュニティは医者の数、大工の数、子供の数を同数に維持できたんだ。
ところがここ数十年くらい、一般の人に「常識」を教えているのが、テレビかネットになっている。
結婚できないのに未だに「普通の男がいないのよね」と言っているアラサー女性が多いのも、働きたくてもやりがいのない仕事がないので働けない若者が増えているのもこれらの影響があるだろう。
山田君 なんか、今回も「わるいね」ボタンが沢山押されそうですね。
博士 気にするな。ここで、断言しよう。基本的に大衆は馬鹿だ。これは今も昔も変わらない。
先ほども述べたが、ほとんどの人間は自分の人生を長期的に考える事が出来ない。
だから、長期的な幸せを維持するため、コミュニティを維持発展するための「常識」がある。何歳までにこれをしなさい。これをしなければ幸せになれないということをコミュニティが、コミュニティに所属するメンバーに植え付け、誰でもそれなりの人生を歩み、コミュニティを維持できたんだ。
だが、今、そんなコミュニティは失われている。グローバル化も一つの要因だな。世代間の断絶は進み、今の若者に「常識」を教えてくれるのは、テレビやネットしかない。なのに、そこから発信される情報は、移ろいやすい人の感情に媚びたPVや視聴率によって、左右される。しかも、スポンサーの思惑もそこに加わる。
つまり大衆は、移ろいゆく自分たちの感情とスポンサーに振り回されて生きることになる。
先ほども述べたが、「普通の男がいないのよね」と言っている女性や、働きたくてもやりがいのない仕事がないので働けないとか言っている若者はその犠牲者だ。
これは日本だけじゃなく、欧米でも起こっているらしい。極端な市場原理主義とグローバル化の犠牲者で、これからその痛みを世界中が味わうことになる。
山田君 ふ、深いですね、博士……。
博士 君が高城亜樹ちゃんの体調を気にしてる間に、人生に直接関わる変化が起きているということだ。君は自分の人生において、あるいは日本の社会において考えるべき事を考えずにAKBのことばかり気にしているということになる。
ただ、ネットニュースのあやうさはそれだけではない。ニュースの価値の倒錯に加えて、さらに我々を惑わすものがある。それは次回に話そう。
<次回予告>
ネットニュースの落とし穴(後編)
談志は死んだ?死んでない?「流されやすい人々」が日本をダメにする!?
恋の悩みを相談してみませんか?
恋愛ユニバーシティでは、無料でお悩みを相談できる掲示板があります。「片思いを成就させたい!」「どうしても復縁したい!」「彼と結婚に至るには?」など、さまざまな恋愛のお悩みを受け付けています。
相談には、恋愛や男性心理を知る当サイトユーザーが回答し、解決方法をアドバイスします。
「悩みを公開したくない」「すぐに回答がほしい」という方は、「電話・メール恋愛相談」をご利用ください。実績のある恋愛カウンセラーや専門家が、あなたのお悩みに答えます。