上地雄輔、紗栄子、神田うの……理解できない人気者たちの存在を読み解く

公開日 2015-03-20 12:03
上地雄輔、紗栄子、神田うの……理解できない人気者たちの存在を読み解く
登場人物

渕上賢太郎(ふちがみ・けんたろう)博士
モテモテアカデミー及び夢を叶えるアカデミー主宰。数学、生命科学、行動経済学の博士号を持ち、人の心の動きを論理的に解明する。いついかなる時もニュートラルであるために、年の初めも平常心。

山田君
博士を慕う冴えない32歳。博士の教えにより、今年ついに彼女をゲット。彼女いない歴=年齢のモテない人生に終止符を打った中堅IT企業のSE。特技は地元の大会で優勝経験のあるけん玉。

※この記事は、2011〜2013年までの間に、MSNのニュースサイト・ドニッチにアップされたぐっどうぃる博士の記事の復刻版です。


山田君 博士、大変です!!

博士 なんだ?

山田君 橋下大阪市長が3月から6月の間に暗殺されるようです(※この記事は、2012年に書かれた記事です)!

博士 これこれ、滅多なことを言うもんじゃないよ。

山田君 いや、確実です。なんたって情報ソースは『探偵ファイル』ですから。

博士 探偵ファイルか。微妙だな。まあ、確かに彼を恨んでいる人は少なくないだろうから、ありえなくはないかもな。彼は大阪の人々ために必死で頑張っているが、その結果、一部の人は、“理不尽”に生活が苦しくなるに違いない。そう言った人達のさらに一部は、彼を殺したいほど恨んでいるかもしれないな。

山田君 そんな事どうでもいいんです! どうしても理解できない事がありまして。

博士 そんなことよりって、君がふってきた話だぞ。

山田君 上地雄輔が何故モテるのかを教えてください! 

博士 知らんがな。そっちの方がどうでもいいだろ!

山田君 モテに興味のある僕としては、どうしても専門家の博士に分析してもらいたいんです。

実は、これ、上地雄輔がブログで公開していた小説です。
いや、これには度胆を抜かれました。一部を紹介するとですね……

セミが鳴り響くなんのへんてつもない住宅街。
その一角にあるコーポの102号室のリビングで、宮下周助(28)がスナック菓子を食べながら、TVに映る甲子園を見ていた。

周助の横では
息子の空(4)
娘の海(3)
が二人、扇風機の前でゲーム片手に
『あ"~~~~~~』
『(*≧∀≦*)キャハ』
と仲良く遊んでる。

奥から嫁のゆかり(26)
が掃除機をかけながら
『パパぁ~たまには子供達を公園にでも連れてってあげてよぉ~』

周助
『ん?ああ‥』
と動く気配がない。

ゆかり
『‥もぅ。』
と掃除を続けるゆかり。

(上地雄輔オフィシャルブログ神児遊助より抜粋)

…と、こんな感じなんですよ!

博士 5年ほど前にケータイ小説というジャンルがブームになってから、世の中、どんな文章が良くてどんな文章が悪いか分からなくなってきた。これはこれでありかもしれないと思ってしまうほどだ。

山田君 じゃあ、堂本剛さんの公式ホームージも見てください。凄いです。

博士 どれ、どうせ想像の範囲内だろ‥‥。
こ、これは確かにすごい‥。 彼は“神”になろうとしているようだ。

山田君 話を戻すと、上地雄輔は島田紳助に対する「お父ちゃん」発言もあったり、結構トンデモな言動を繰り返してる人だと思うんですが、ファンは根強いですよね。去年の夏、横浜の大さん橋で行われたイベントでファンが熱中症で倒れたって話題になってましたけど、僕は炎天下で長時間並ぶほど熱いファンが1000人単位でいるということに驚きましたよ。僕にはとてもついていけません。

博士 確かに。あの事件は一般の人たちに「上地雄輔ってまだそんなに人気があったんだ」と思わせたな。そして「なんでそんなに人気があるの?」と不思議に思った人もたくさんいただろう。

だが、上地雄輔は別に、君も含め「彼を理解できない人」に付いて来てもらわなくてもいいんだよ。彼はもはや、“閉じた世界の住人”なんだ。

山田君 閉じた世界の住人?

博士 そうだ。“神になろうとしている堂本剛”、“私らしい生き方をする紗栄子”、“美しさでもビジネスでも結婚でも成功している神田うの”なんかもそうだが、このあたりの人々は、世の中の結構な数の人に嫌われても問題ない。「すべての人に好かれること」を目指すのをやめた人々なんだ。

山田君 タレントなのにですか!?

博士 つい最近まで、タレントのほとんどは、世の中のより多くの人、できればすべての人に好かれようとしていた。少なくとも、売り出す側はそう考えていたはずだ。

だから、できるだけ嫌われないように、万人に好かれる行動をとり、当たり障りのないコメントをし、愛される範囲で毒舌や天然を披露した。今でも、多くのタレントはそうやって好感度を上げることに腐心している。
だが、万人に好かれようとすると、どんどん平均的になっていくんだ。きわめて普通で特徴のない、目立たないキャラクターになっていく。

山田君 井上真央とか綾瀬はるかとか、そんな感じですね。

博士 そうだ。ジャニーズのも、それぞれキャラがあるが普通の範囲内だ。

山田君 彼らが好かれるのはよくわかります。嫌われる要素がないですよね。

博士 嫌われる要素を減らす≒普通になる、だからな。
井上真央とか綾瀬はるか、嵐などのようにトップにたつ一握りの人達は支持を集められるだろう。でも、それ以外の人たちは生き残れない。他の誰かと差別化出来ないからだ。特にテレビの力が弱まり、スポンサーやコンプライアンスによるコントロールが強くなった今、自由度がさらに低くなり、トップ以外はみんな退屈などこにでもいるキャラに成り下がるしかなくなった。

ちなみに、古舘伊知郎が、「当たり障りの無いニュースキャスターになろうとして、退屈でつまらなくなった最初の例」だと僕は思っている。

山田君 じゃあ、テレビでモテるなんて、ほんのひとにぎりの選ばれた運のいい人にしか無理じゃないですか!

博士 いや、一部の人だけに強烈に人気を得るという方法がある。

山田君 その方法を教えてください!

博士 まずひとつ。
ある特定の“とんがった価値観”を、世間に媚びずに演じてしまう事だ。
たとえば、「スピリチュアルな世界は存在し、良い行いをすれば神様か何かが見ていて、必ず報われる」という価値観、あるいは「好き勝手に生きていいじゃない?子育てに一生懸命になりすぎるなんて、バカバカしい事だと思わない?」という価値観。

このようなとんがった価値観は、多くの人には受け入れる事ができない。でも、一部の人たちは、その考えを密かに持っている。もしタレントが、その価値観を持つ人を演じられれば、一部の人たちから熱狂的に支持される、ということになる。

このようなタレントは多くの人たちから拒絶されるが、それがかえって一部の人たちとの絆を強めたりする。以前話した、ホモフィリーの関係【モテの定理第9回 http://u-rennai.jp/contents/column/670 】だな。世間一般に理解されない存在であることが、閉じた世界の中で彼らの価値を高めるんだ。

山田君 なるほど~。僕らが「全然わからない」って言ってることは、彼らにとっては決してマイナスじゃないんですね。

博士 そして、彼らの人気の秘密は、もう一つある。

山田君 何でしょう?

博士 人々に答えを出しているということだ。

山田君 どういうことですか?

博士 世の中で、専門家や有識者など「賢いと思われている人」に生き方の問いをすると、みんな煮え切らない答えを出す。たとえば、「結婚はした方が良いですか?しない方が良いのでしょうか?」と聞けば、「賢いと思われている人」の答えは大抵こうだ。「人それぞれだと思います。その人がしたい事をすれば良いでしょうね」と。

人生のどんな選択においても、賢いと思われている人は明確な答えをくれない。
これは人に限らず、テレビもそうだし、映画もそう。
最近のアカデミー賞やカンヌ映画祭で評価された映画で、ラストに明確な答えがあった試しがない。皆「ここから先はあなたが考えて」という具合で終わっている。

それは、ある意味正しい。数年前、映画評論家の町山智浩さんのPodcastで聞いたのだが、トミー・リー・ジョーンズが『ノーカントリー』という映画のインタビューでこう言っていたそうだ。「映画で答えを出してはいけない。答えを出したら、それは宗教だよ」と。

山田君 さすが、地球人を観察している宇宙人は言う事が違いますね。

博士 ところが、迷っている人々が必要としているのは「答え」なんだよ。
「結婚した方が良いですか?」聞いている女性は、良いか悪いかを知りたがっているのであって、「あなた次第」と言われても困るんだ。

普通の人たちは、安心して従える指導者や、無条件で頼れるガイドラインを必要としている。だから、上地雄輔、堂本剛、紗栄子、神田うのなんかが支持される。

山田君 もしかして、暗殺されるかもしれない橋本徹市長もそうですか?

博士 「答えを出している」という意味では、その通りだ。

そういう意味では、先週言ったホリエモン、勝間和代、ヒットラー、小泉純一郎、当選した当時のオバマ大統領も、迷える人たちに“答え”を出した人たちだ。

悩める人々は答えを必要としていて、テレビに出てくる多くのタレントのように、何の主張もなく、人生の方向を示してくれるわけでもない当たり障りのない人たちからは、答えを見つけ出すことが出来ない。

橋下徹がなぜあそこまで強引に政策を進める事ができるのか?
それは、暗殺されるかも知れないほど一部の人々を不幸に追い込みながらも、大多数に答えを出すことに成功したからだ。もし多くの人に“答え”を出す事ができれば、革命さえ可能となる。

「答えを出す事」が如何に熱狂的な支持を得られるか分かるだろう。

山田君 でも、僕は上地雄輔には惹かれませんけど。

博士 当然だよ、山田君。 それは上地雄輔が山田君には答えを出していないからね。

実は、現在、先進国において誰もが納得する明確な「答え」などない。
昔の成功哲学のように「巨万の富を築いた人が成功者」なんて言える単純な世の中じゃなくなっている。価値観が多様化したことと、先進国が成熟しきってしまったことで、安易な答えを出すことが不可能になっているんだ。

そんな中、明確な答えを出す人は、そのほとんどが“一部の人間にだけ正解”か、“特定の一時期だけ正解”を出しているだけなんだ。つまりほとんどの人にとっては間違いということになる。誰も間違った答えには惹かれないよな。

前回言ったように、それがもっともらしければ惹かれるし、その通りに行動して成功すれば、それが答えになるため、惹き付けられる。ただ、それは「一時(いっとき)」もしくは「一部の人間」だけだ。
その一部の人間を対象にすれば、そこが市場になるんだよ。つまりモテにつながる。

山田君 博士。これまでの長い話を3行で言ってもらえますか?

博士 
今のタレントのほどんどは、普通で退屈。
一方、尖っていて、答えを出すタレントは一部の人を中毒にする。
だから、彼らはモテている。

山田君 なるほど。じゃあ、時々彼らが意味不明なことを言ったり、世間に反感を買う発言をするのは……

博士 そうだ。 我々に発しているのではなく、自分を支持する一部の人に発しているんだ。彼らから、我々一般人は見えていないし、自分たちを非難する人は敵に見えていると思う。

山田君 そうか! 上地雄輔は、僕たちに言っているわけじゃなかったんだ。納得です。
ってことは僕も今年もっとモテモテになりたいなら、閉じられた世界でとんがった方がいいんですかねえ。例えば、特技のけん玉とか。

博士 却下だ。

山田君 ええええ!!!

博士 けん玉は世間から肯定も否定もされていない。そのうえ、君は人々の問いに何の答えも出していない。

山田君 ううっ、確かにそうです。

博士 反社会的でも良いし、スピリチュアルでも良い、拝金主義でも、嫌儲主義でも、快楽主義でも構わない。誰かを強く非難するキャラでも良いし、右翼でも左翼でも良い。偏ったキャラで、なおかつ一部の支持者がいる層の価値観を徹底的に演じ、なおかつ彼らに答えを出せば、多くの人達からは煙たがられるものの、一部の人達から強い支持を得るだろう。

山田君 そのモテ、勇気がいりますね。

博士 だから彼らは貴重なんだ。

<次回予告>
加護亜衣の結婚に見え隠れする「弱った女」を得意とする男

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