田村淳、警察との口論と 有吉弘行年収5億円報道から考える妬みと幸せ

登場人物

●渕上賢太郎（ふちがみ・けんたろう）博士
モテモテアカデミー及び夢を叶えるアカデミー主宰。数学、生命科学、行動経済学の博士号を持ち、人の心の動きを論理的に解明する。芸能ニュースは研究材料。

●山田君
博士を慕う冴えない32歳。博士の教えにより、今年ついに彼女をゲット。彼女いない歴＝年齢のモテない人生に終止符を打った中堅IT企業のSE。芸能人が得して見えて許せない。 　

※この記事は、2011〜2013年までの間に、MSNのニュースサイト・ドニッチにアップされたぐっどうぃる博士の記事の復刻版です。

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山田君　ロンブーの田村淳って、なんか好きになれないんですよね。

博士　どうした、山田君。

山田君 田村淳がネット生配信中に駐車違反をめぐって警察官と口論したって話題に腹が立ってるんです。10月31日の日刊ゲンダイに、そのやり取りの一部が載ってるんですが、（田村淳が警官に対して）「テレビに出ているから何なんですかっ！？　僕、普通の生活しちゃダメなんですか？　それは職業差別でしょう！」「俺の仕事を侮辱しておいて、もっときちんと謝罪してくださいよ！」とがなり立ててるって書かれてました(※この記事は、2012年に書かれた記事です)。

また同記事に「淳は終始、相手の揚げ足を取るような発言を繰り返し、謝罪のやり方にまでクレームを付けた。「『失礼しました』ではないでしょ？　『申し訳ございません』でしょ！？」とブチ切れている」と書かれてます。田村淳のような売れっ子芸人の上から目線がむかつきます。

博士　だが、11月1日のサンケイスポーツを読むと、その後、田村淳が全面的に自分の非を認め、謝罪していることが分かる。また、所属事務所の吉本興業によると、10月30日に警視庁原宿署に謝罪で訪れたようだ。さらに、11月2日のデイリースポーツには、フジテレビのレギュラー番組「知りたがり！」、ＮＨＫ総合「ＳＨＩＢＵＹＡ　ＤＥＥＰ‐Ａ」それぞれの生放送の出演を本人の意思で控えると書かれている。

山田君　あと、有吉にもむかついてます。

博士　なぜだ？

山田君 10月17日の日刊ゲンダイによると「有吉さんのゴールデン・プライムの１時間番組の出演料は１本150万円以上。現在のレギュラー番組が15本で年間約720本。単純計算で収入は10億円になる」らしいです。事務所と折半して5億円が収入になるって、あんな適当なおしゃべりをして、年収5億円て！

博士　有吉弘行は才能があり、努力をしていて、さらに運が良かったからだろう。
一方、山田君は才能がなく、努力もしておらず、運もない。

山田君　放っておいてください！小島よしおだって一発屋だっていいますが、今でもテレビでよく見ますし、結構稼いでるでしょ。河本準一だって外車3台持ってて、腕時計はフランクミュラー、子供は有名私立に通ってたって言うじゃないですか。

博士　9月10日のエキサイトニュースによると、河本準一は今、仕事が激減して外車2台と腕時計は売り払い生活は困窮しているみたいだぞ。

山田君　それならいいですが。でも、それ本当ですかね？

博士　山田君。今日はずいぶん荒れてるな。悪魔みたいな顔になってるぞ。

山田君　実はそんな自分が嫌なんです。最近はテレビを見るたびに腹が立つんです。バラエティ番組を見ていても、嫉妬心が収まらず全然楽しくないんですよ。何でこんなに腹が立つのか自分でも分かりません。

博士　理由の1つは、山田君が毎日のように芸能ニュースをチェックしているからだろう。

山田君　博士、お言葉ですが、「毎日のように」ではありません。毎日30分おきに芸能ニュースを覗いています。

博士　仕事しろ、仕事！！
これまでことあるたびに言ってきたが、インターネットのサイトは、クリックされてなんぼだ。人々にクリックさせるため、我々の感情を煽（あお）るような記事を選んで載せている。田村淳の警察との口論を見れば、売れっ子タレントの横暴ぶりに腹を立て、有吉弘行の年収5億円という記事を読めば、「あり得ない」「許せない」と引きつけられる。

山田君　10月30日のZAKZAKに書かれた「失態続き”ＴＢＳ、深刻な内部事情」というニュースには、安心したくて思わずクリックしちゃいました。

博士　ニュースメディアは、読者に嫉妬させるか、安心させるかでクリックさせてる。だから山田君は、30分おきに嫉妬したり安心したりを繰り返してる。芸能ニュースで楽しんでいるうちは良いが、山田君のように心が荒（すさ）んでしまうと良くない。

山田君　たしかに、心が苦しい感じがします。

博士　どれくらい良くないかは、TEDカンファレンスで『格差が社会に及ぼす影響』という発表でリチャード・ウィルキンソンが述べている。

山田君　格差ですか？格差の話と芸能ニュースがどう関係しているのでしょう？

博士　まあ聞きたまえ。リチャード・ウィルキンソンによると。先進国において貧富の差が大きい国ほど平均余命が短くなるそうだ。

山田君　ええ！？貧富の差が大きな国は寿命が短いんですか！？

博士　寿命だけでなく、殺人の発生率、囚人の割合、肥満率、学校でのイジメ、精神病と診断された人口の割合、高校中退生などありとあらゆる面で、経済格差は悪影響をもたらすらしい。

山田君　でも、ちょっと待ってください。貧富の差があるってのは、単にお金のない人がいっぱいいるからじゃないですか？お金のない人が医療を受けられないとかで平均寿命を縮めていて、殺人や犯罪などを増やしているのでは？

博士　山田君、時々するどいな。だが、そうではないらしい。
まず、同じ地域内、同じ国内の貧富の差は、大きな影響がある。最富裕層から、少し収入のランクが下がるだけで、先程述べたような様々な悪影響がでる。その一方で、別の国同士で貧富を比較してもそれほど影響がない。どういうことかと言うと、隣にいる人がお金持ちか貧乏かは重要だが、他の国など、遠く離れてしまえば影響がなくなるということだ。

山田君　自分の身の回りにいる人が貧乏か金持ちかが重要ってことですね？

博士　そうだ。リチャード・ウィルキンソンが言うには、それは「優越感や劣等感、評価の高低、尊敬、軽蔑などと関係している」ということだ。

山田君　つまり僕が嫉妬したり、優越感を持ったりするのは、寿命にも、健康にも、肥満にも、精神状態にも悪影響があるということですか？

博士　そうだ。

山田君　読めてきました。だから僕が芸能人達を妬（ねた）むのは、体に良くないってことなんですね？

博士　その通り。リチャード・ウィルキンソンは更に、次のようなことを述べている。「社会心理学で同じ類の研究が進められていて、どのような作業が人に最もストレスをもたらすかという実験がされたことがあるのだけど、それは、「社会的評価を脅かすような作業」つまり、自尊心や社会的地位を他人に脅かされるものだった」と。

山田君　それで思い出したのですが、10月23日のデイリースポーツに神田うのが『解決！ナイナイアンサー』に出演していた時のことが書かれています。何でも、頻繁にブログを更新する神田うのは、何かしたり書いたりすると、すぐに人に妬（ねた）まれたり、悪口を言われることが悩みなようです。

ここから得られる教訓は…。

博士　そうだ。健康を維持したいなら、神田うののブログは見ない方が良いということになる。

博士　しかもそれは、大きなお世話だが、神田うのの健康にも悪い。地位的な不安、人からどう評価されるか、どう見られているか。相手に感じ良く気の利いた人と思われているかなど、社会的評価に対する恐れも人をストレスにさらすようだ。

神田うのがどこまでそれに敏感か分からないが、人によっては、すぐに病気になってしまうに違いない。

山田君　じゃあ、健康になるにはどうしたら良いでしょう？

博士　妬み、苦しむなら、それらのニュースから少し離れることだ。FacebookでもTwitterでも自分の嫉妬心を煽る内容ばかりなら、それは見ない方が良いだろう。

山田君　あと、ロンブーの敦や、有吉は大成功を収めていますよね。でも僕は仕事の目標すら達成できていないんです。これも僕が今苦しい理由かもしれません。

博士　山田君、それは完全に間違いだ。

山田君　どういうことでしょう？

博士　TEDカンファレンス、ショーン・エイカーの『幸福と成功の意外な関係』に、そのヒントがある。

ショーン・エイカーによれば、ほとんどの人は、「自分の会社が上場すれば」「異性にモテたら」「この仕事がうまくいったら」もっと幸せになれると思っているが、それは違う。もしそれで幸せになるなら、目標を達成した人は皆幸せになっているはずだ。ところが、周りを見回せば分かる通りそうではない。

山田君　確かに。

博士　目標を達成しても、達成しても、幸せは逃げていく。とショーン・エイカーは言っている。

彼はハーバード大学に入り、幸福の研究をしはじめた、その時、彼の田舎から友達が遊びにきて言ったそうだ「ハーバード大学で幸福の研究なんて無意味なんじゃない？ハーバードの学生が不幸な状態にいるなんてありえない」と。だが実際は違った。ハーバードの学生の多くは、競争や勉強の重みが原因でストレスを抱えており、幸福ではないらしい。

山田君　はあ。

博士　ショーン・エイカーは言う。幸福というのは10％は環境が決めているが、残りの90％はその環境を脳がどう処理するかだと。

また、ショーン・エイカーは世界45カ国をまわり、その全てにおいて「一生懸命がんばれば成功できる 成功すれば幸せになれる」と教えていると。でも、それは科学的に逆だと言うんだ。

山田君　成功したら、幸せになれるんじゃないんですか？

博士　それが違う。「成功するたびに脳がしていることは 成功の定義を再設定するということ」らしい。つまり成功は、幸せをいつも届かない所に追いやってしまう。そうではなく、幸せをまず先に置くことが重要だとショーン・エイカーは言う。

ちなみに、ポジティブな状態の脳は、ネガティブな状態の脳より31%生産性が高くなる。医者はポジティブな脳である時19%早く正しい診断をするそうだ。

山田君　つまりは、「成功したら幸せになれる」という発想は、幸せを遠ざけるってことですね？いま、ここにある状態で、そのまま幸せになれば、健康になるだけじゃなく、成功も近づくってことですか？

博士　さすがだ、山田君。そうショーン・エイカーは言っている。

山田君　でも、じゃあ、どうすれば良いのでしょう？

博士　ロリー・サザーランドのTEDにおける『広告マンの人生の教訓』という発表も興味深かった。それは、現実世界をこれ以上便利にしたり、物質的な豊かさを追求しなくても十分幸せになれるという主張だ。たとえば、新幹線で、東京大阪間を2時間35分から、2時間10分にするのはもはや意味はない。むしろその2時間35分の間、新幹線の中でどう過ごすかの方が重要だと彼は言う。物質がもたらす幸福は、もはやそれほど重要ではないという主張だ。そして、今持っているものに対する見方を変えるだけで、十分幸せになれると言うんだ。

ロリー・サザーランドの発表の12分30秒あたりから始まる「シュレディーズ」という四角いシリアルの話が象徴的なのでぜひ見て欲しい。

山田君　見るのが面倒なので、説明してください。

博士　うむ。これはある種のユーモアなのだが、そこには、「シュレディーズ」という四角いシリアルが出てくる。そのシリアルのリニューアルにあたり、ただ四角いシリアルを45度傾けただけのシリアルが出てくる。見た目にはひし形だが、実際は正方形のシリアルを斜めに見ているだけのものだ。

山田君　つまり□が◇になっただけで、全く同じシリアルということですか？

博士　そうだ。人々は、それが全く違うものに見え、議論までしている。商品そのものは全く変わっていない。ただ、四角を45度回しただけで、付加価値が与えられると彼は言いたいのだと思う。

山田君　ちょっと何言ってるか分かんないです。

博士　以前ブランディングについて述べたことがある。相手に気に入られるためには、相手より高いスペックに成る必要はない。そうではなく、スペックではない付加価値を与え、他と差別化を測るべきだと。

山田君　つまり？

博士　ノート型パソコンを見てみると良い。どのメーカーのものを買っても機能はほとんど変わらない。それぞれのメーカーが、女性向けにしたり、ビジネス仕様にしたりと、それぞれの付加価値を与えているに過ぎない。自分の人生もこれと同じで、心の持ち方、考え方を変えれば、全く同じ一日に付加価値を与えることができる、それが幸せに繋がるということだ。

山田君　博士。どうすれば良いか、具体的な方法を教えてください！

博士　良かろう。では、最後に、幸せになるために、明日からできることをショーン・エイカーの発表に従って2つだけ書いておく。あとはぜひTEDの発表を見て欲しい。
1）過去24時間のポジティブな体験を日記に書く。そうすることで脳がそれを追体験することになる。
2）意識して誰かに親切な行動を取る。
この2つを行うだけで、日々に付加価値が与えられ、山田君の荒んだ心は安定し、幸せな日々を送ることができ、さらには、その結果として、成功が近づくだろう。

山田君　はかせ、でも、芸能ニュースはこれからも見ていいですか？

博士　もちろんだよ。山田君。僕が、ここでそれを否定出来るわけがないだろう。
だが、ほどほどにな。