産婦人科医・対馬ルリ子先生インタビュー 全5回vol2〜女性ホルモンのピークは20~30代! 無駄にしないための婦人科検診を
ピークを知って、正しく活用!
女性ホルモンについて、みなさんはどのくらい知っていますか?
今回も産婦人科医・対馬ルリ子先生に、結婚や恋愛に役立つ女性ホルモンの活用法から、気になる妊娠・出産まで、これからのライフプランを立てる際にとても参考になる知識をいろいろと教えていただきます。
前回の記事(「産婦人科医・対馬ルリ子先生インタビュー全5回vol.1〜男の本能をくすぐる女性ホルモン「エストロゲン」を活用せよ!」)もぜひ参考にしてください。(恋愛ユニバーシティ編集部)
対馬ルリ子先生
医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス 理事長、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長。産婦人科医師、医学博士。2003年に女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ女性の生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立。全国約600名の医師、医療保健関係者と連携し、さまざまな啓発活動や政策提言を行っている。著書に『恋より美容液よりシンデレラホルモン』(経済界)『女性ホルモンで世界一幸せになれる日本女性』(マガジンハウス)など
妊娠出産だけではない、女性ホルモンの活用法
山際 女性ホルモンと恋愛の関係を解き明かす第2回目です。今回は「恋愛ユニバーシティ」のメインユーザーである、20代~30代の女性とホルモンについてうかがいます。ズバリ、この年代は女性ホルモン的にはどういう時期にあたりますか?
対馬 それはもう、一生の中で最も女性ホルモンがたくさん出て、一番体力も気力も女性ホルモン力も高い時期です。子どもの時はホルモンが出ていないし、思春期以降18歳くらいまでにだんだんピークになっていく、20代〜30代半ばはその頂点の時期です。恐らく20代後半から30代後半までが人生のなかで最も妊娠出産力もあるし、活動力、エネルギー力も高い時期です。
山際 それは朗報です。しっかりその恩恵を受けたいですね。
対馬 そうです。だからこそ、せっかくの人生のピークをいろんなことでダメにしないでほしい。なぜかというと、若い時には女性ホルモンイコール妊娠出産のホルモンであるわけですが、妊娠しなくても女性ホルモンの恩恵をちゃんと自分のなかにとりいれておくことはできるから。
山際 本来の目的であるところの妊娠出産をしてもしなくても、女性ホルモンを活用する方法があるということですか?
対馬 そうです。今は昔ほど妊娠出産しなくなった分、卵巣が働きすぎたり、子宮の状態もとても変化しやすいという問題が起きています。子宮や卵巣や乳房は、もともと妊娠出産に使うものだったのに、それをやらずに10年20年と過ごす人が増えているわけです。そうするとどうしても病気も増えるんですね。
山際 それを防ぐ方法はありますか?
対馬 早期の病気のサインを見逃さないということと、病気にならない工夫をしていくことがすごく大事。それを知らないと、30代の半ばになって、こんなに大きな筋腫があったとか、妊娠したいと思ったら子宮内膜症がひどくて不妊になっていたとか、あるいは乳がんになってしまって、妊娠は延期して、しばらく乳がんの治療をしなくちゃいけないとかいうことが起こってしまう。そういう風にならないためにも、できたら10代から、自分がどういう体の仕組みで、女性ホルモンがどうなっているかということを知って、それとどういう風に付き合っていくのかを意識して、生活してほしいです。
山際 自分のライフプランを早いうちに立てるということですね。
対馬 そうです。もちろん都合変更していってもいいですが、まずは意識が大事です。そのためにも病気の早期発見が大切です。そして早期発見ができれば治療しながら、妊娠したい人は妊娠の時期をプランしていくことができます。たとえば20代の検診で筋腫が発見されたとします。そうしたら30代後半に妊娠を予定していたけれど、筋腫が小さいうちになるべく前倒しにして妊娠した方がいいとか、自分の中に情報と判断がどんどんできていくじゃないですか。自分に関する情報をどう組み替えてどう生かすかは自分力ですが、まずは自分の状態を常に客観的に知っておく。そして自分のやりたいことと、今の自分の行動と未来をつなぎあわせていくのはすごく大事なことです。
会社や地域の検診は男性向け。女性に必要な検査を知ろう。
山際 筋腫などの病気を早期に発見するには、やはり定期的に検診を受けるということですか。
対馬 そうです。女の人が気をつけなければいけない病気はすごい勢いで増えていますが、その病気のほとんどが症状があまりないのが特徴なんですね。たとえば子宮頸がんにしろ、卵巣のう腫にしろ子宮内膜症にしろ、最初に起きてきたときにはほとんど症状がないんです。あるいは、ちょっとした生理痛と思って見逃すとか。それが病気であるかどうか自分ではわからない。だからこそ、検診は早いうちに始めて欲しいし、検診というのは、何も異常がないことを定期的に確認していく「健康習慣」なので、その健康習慣をきちんと身につけておけば、何か起こったときに最も早く気がつくし、それに対する対処も早くできるんです。
山際 症状が出てからでは手遅れであるケースが多いという訳ですね。この場合の検診は、会社や自治体で行っているレベルで大丈夫ですか?
対馬 それは全然ダメです。
山際 ダメなんですか?
対馬 会社の検診は、ほとんどが、男の人がメタボになりやすいことのために作られている検診です。みんな一緒に肝機能を調べたり、ウエスト測ったりしているけれども、あれはほとんど男の人の「メタボの発見」のためにやっていて、若い女の人にはあまり役立っていません。
山際 女性のために必要な要素が検診には入っていないのでしょうか。
対島 残念ながらそうです。女の人の20代30代の病気の早期発見でいえば、まず血液検査は貧血を調べて欲しい。それ以外には婦人科検診で婦人科系の病気を調べて欲しいですね。子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、それに30代後半から乳がんも増えてくるし。今はオプションになっているのもちょっと変だなって思うんですよ。こういう婦人科系だけの検診を「ビキニ検診」というのですけれども。“ビキニで隠すところだけの検診”という意味です。男性の検診にビキニ検診だけくっつけてやって、その女性がこれからちゃんと産めるんだろうかとか、これから元気に働けるんだろうかということには、何の答えにもなっていないことに気がついていません。これはみんなが知って欲しいし、女性には女性に本当に必要な検診を入れて欲しいと私は思っています。
山際 たとえばどんな検診があればよいのでしょうか?
対馬 子宮頚がんの検診をやるときに、ついでに超音波も受けましょう。超音波で子宮や卵巣をみておくと、筋腫や卵巣の病気がないか、数分で、何の痛みもなくすぐできる。それを定期的にぜひやってほしいな、と思います。
山際 近い将来ぜひそういう制度になってほしいですね。それがない今としては、自分で産婦人科に行って検診を受けるしかない。検診はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
対馬 若い女の人は1~2年に一度検診を受けるというのをWHOも推奨しています。まあ2年前に筋腫のなかった人が、2年後に小さい筋腫があったとしても、そんなには状況変わらないんですね。だからまず毎年受けると心掛けていて、でもちょっと忘れちゃった、いろいろ忙しくて飛んじゃった、でも2年後には受けるっていうのがいいと思いますね。
山際 女性ホルモンに守られて、元気いっぱいのこの世代だからこそ、検診を怠らずに将来のライフプランを確立していきたいですね。
(取材・文/山際恵美子)
『女性ホルモンで世界一幸せになれる日本女性 』
対馬 ルリ子
(マガジンハウス)
・妊娠出産に使う子宮や卵巣・乳房を長いあいだ使わないと静かに婦人科疾患が増える
・早期発見のためにも、女性に本当に必要な検診にいこう
山際恵美子 (編集プロデューサー)
編集プロデューサー。元マガジンハウス「GINZA」編集長。大学卒業後、ロータリー財団奨学生としてフランス留学。
帰国後平凡出版(現マガジンハウス)「Elle Japon」創刊メンバーとして出版の道に入る。ミラノ・パリコレクションの取材を10余年経験。その後書籍編集に移りベストセラー「断捨離」 の担当編集はじめ、ライフスタイル、医療、美容、料理と幅広い書籍を出版。2016年3月退職し、フリーの編集プロデューサーに。また、プロのフランス語原語シャンソン歌手の顔も持つ。
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