【セルフケアと過去の傷】③幸せになれない相手と分かっているのに別れられない
付き合っても幸せになれない男性を、そうと知っていながら恋人として選んだり、
付き合っていても大事にされず辛い思いばかりしているのに、
そのパートナーと離れられず尽くし続けていたり…。
このような女性は、恋愛の駆け引きやテクニックをいくら知っていても、幸せな恋愛をすることができません。
このレポートでは、駆け引きやテクニック以前の問題として、
セルフケアができているかどうかということが、幸せな恋愛をするためにとても大切である
ということを、具体的な事例をあげながら繰り返しお話しています。
(セルフケアについては、第1回レポートをご覧ください)
今までいろんな恋愛指南書やテクニック本を読んだけど、どうも当てはまらない気がする、また、書いてあることをやってもうまくいかない、書いてあることがそもそもできないという人のために、このレポートは役立つかもしれません。
幸せになれない相手と分かっているのに別れられない…そんなお悩みは直接電話で専門家に相談できます
すべてを知れば、すべてを許すことになる
盗人にも五分の理を認める
世界的ベストセラーである「人を動かす」(D・カーネギー)の、一番始めにでてくる原則です。
誰かを非難・批判したくなったら、苦情を言いたくなったら、
非難する代わりに、理解するように努めよう。
どういうわけで、そんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみよう。
そのほうがよほど得策でもあり、またおもしろくもある。
そうすれば、相手への同情、寛容、好意も、おのずと生まれ出てくる。
すべてを知れば、すべてを許すことになる。
この「人を動かす」は自分以外の人を動かす原則について書かれた本ですが、
自分に対しても当てはまると思いませんか?
自分でもよくない行動だと分かっているのに、どうしていつも同じことをして失敗してしまうんだろう。
Aを選んだ方が幸せになれると思う、なのにいつも幸せになれないだろうBを選んでしまう。
そして、そんな自分を責めてしまう。
できない自分が悪いんだ!
なんて意思の弱い私!
そうやって自己嫌悪してしまうとき、自分を非難する代わりに、自分を理解するよう努めてみませんか?
どうして、自分でもよくないと思っている行動・言動・選択をしてしまうのか。
すべてを知れば、きっとすべてを許せるのはでないかと思うのです。
他人から責められて辛いときは逃げることができます。
ですが、常に自分から責められている人は、どこにも逃げることができません。
それはとても苦しいことだと思います。
セルフケアができている状態というのは、
自分が幸せで、気持ちが安定して、いい気分でいる状態です。
常に自分を責めていては、このような状態になるのは難しいですね。
頭の中で自分を責める声が聞こえたら、
非難するのではなく、理解して、自分を許してあげてほしいなと思います。
では、今回も、現在のトラブルに過去の問題がどのように関わっているか、
具体的な事例をみてみましょう。
(現在のトラブルと過去の問題の関係についても、第1回レポートをご覧ください)
事例3:A美の場合
<幸せになれない相手だと分かっているのに別れられない>
A美は名の知れた企業に勤める社会人1年目の女性。
付き合って2年目のS男と同棲しています。
同棲というより、S男が居候していると言った方が正しいかもしれません。
A美とS男は同い年ですが、A美は大学院を卒業して就職。S男は留年4年目です。
このS男、なんとパチプロになりたいと言って、
就職で上京したA美の一人暮らしの部屋に転がり込んできたのです。
家賃や光熱費などはすべてA美が支払っており、S男はたまに食費を入れる程度です。
パチプロになりたいと言ったS男に対して、A美がなんと言ったかというと、
「それがどんなに厳しいことか分かってるなら、やってみれば」でした。
一日中パチンコ店に通い詰めるS男のために、
A美は自分も仕事をしながら毎日ごはんを作り、S男の目標を応援しました。
どれくらいコストがかかり、プロになるためにはどれだけ利益を出す必要があるのか、
積極的に相談にも乗りました。
経済新聞を買って机の上に置いておいたりもしました。
そんな生活が8ヶ月ほど続きました。
ある日、S男は言いました。
「俺、間違ってた。こんなんで一生やっていけるわけがない」
実際のところ、借金はしていませんでしたが、ほとんど利益は出ていませんでした。
朝8時に家を出て夜12時に帰宅するまで、一日中がんばっているのに、
いっこうに利益はでず、普通に働いた方がいいと身に染みて感じたらしいのです。
S男は専門学校に入り直し、その後なんとか就職にこぎ着けました。
専門学校入学と同時に、A美とS男は遠距離になってしまいましたが、
数ヶ月に一度はA美が会いに行き、付き合いを続けていました。
S男が若気の至りで血迷った生活をしていた間、献身的に支えたA美でしたが、
その後の付き合いでのS男のA美に対する態度は冷たいものでした。
連絡はA美からしなければS男から来ることは皆無。
飛行機に乗って会いに行く交通費はA美がすべて出していましたし、
S男は「来たいなら勝手に来れば」といって、
A美がせっかく会いにいってもパチンコに行ってしまうこともありました。
A美が郵送で送った誕生日プレゼントは開封もされておらず、もらったことすらS男は覚えていませんでした。
クリスマスなどのイベントも、すべて「面倒くさい」「やりたくない」と拒否されたため、
A美は一人で過ごしました。
バレンタインには毎年チョコとプレゼントを渡していましたが、S男からお返しをもらったことはありません。
実はS男と付き合いはじめてから3年目、A美はメンタル面で体調を崩し、会社を退職していました。
療養生活は長引き、貯金もほとんどなくなっていました。
生活は厳しく、毎日不安を抱えていました。
そんななかで、飛行機代を捻出し、S男に誕生日プレゼントを贈っていたのです。
A美は、
「私が会いたくて行ってるんだから、会えるだけでいいんだ。幸せだよ」
「バレンタインだって、あげたくてあげただけだから、お返しなんて期待してないよ」
「S男くんが笑ってると私嬉しいんだ」
と言って、付き合いをやめようとは全く考えていないようでした。
A美も、人並みなデートをしてみたい、幸せなお付き合いがしたい、という気持ちはあったのですが、
S男が好きだからという理由ですべてを諦めていました。
また、A美はこのとき27歳になっており結婚願望もあったのですが、
S男から「俺は結婚する気はない」とはっきり告げられていました。
それでもやはりA美は別れることを考えるのではなく、
「S男くんと付き合いたければ、結婚は諦めるしかないのかぁ・・・。
でも、それでもいい。S男くんが好き。私はS男くんしか考えられない」と思うのでした。
ギャンブルばかりやってA美をないがしろにするS男よりも、
もっとA美を大事にしてくれる人は他にもきっといるでしょう。
実際、他の人から食事に誘われたこともありましたが、A美は目もくれませんでした。
ある日、S男の家へ遊びに行っていたA美は、ちょっとしたことでS男を怒らせてしまいました。
S男は、「出て行け!」と怒鳴り、A美は荷物をまとめ、S男の家を出ました。
誰も知り合いのいない街です。もう終電もない時間でした。
帰りの飛行機のチケットの日付はまだ先。行く当てもなく、お金もない。
途方に暮れてしばらく外を歩き回りました。
そして逡巡したあと、S男の家に戻り、平謝りに謝って家に入れてもらいました。
それから帰る日まで、S男の機嫌を損ねないように細心の注意を払って、
A美は息を潜めるように過ごしました。
さすがに辛くなったA美は、地元に帰って親友にこの話を聞いてもらいました。
「なにそれ!(怒)信じられない!!なんでそんなヒドイことができるの?!」
親友のR子には、これまでのことも全部話していました。
A美のことを大事に思う人だったら、そんなことするはずがない、
もういいかげん別れた方がいい、
とR子は言ってくれました。
R子は100%私のためを思って言ってくれている、
それが間違いないことはA美にもわかりました。
S男といても幸せにはなれない、私は辛い思いをしてばかりだ、
そう思うのですが、A美にはどうしても別れるなんて考えられないのです。
理由なんてなく、好きで、ただ一緒にいたいと思ってしまうのです。
さて、A美さんの状況はツッコミどころが満載というか、ツッコミどころしかないような状況なのですが、
一つずつ考えてみましょう。
まず、A美さんは、S男にとって完全に「手に入った距離」にいるため、ないがしろにされています。
A美さんはいつでもいる、決して離れていかないと慢心しているから、
S男はA美さんの価値を忘れてしまっているのです。
その状況をA美さんが受け入れていることも問題です。
A美さんが自分の価値を認めていたら、S男から失礼な扱いを受けたときもそれを受け入れず、
毅然と振る舞うことができるでしょう。
ですが、A美さん自身が自分の価値を認めていないから、それができずにいます。
このように、A美さんは付き合ってもらっている、S男は付き合ってあげている、
という不自然な関係が確立されてしまっているのです。
ではA美さんはどうすればよいのでしょうか?
自分の価値を認め、自分は大事に扱われるべき存在だと考えを改め、
S男がないがしろにし続けるならA美さんはいつまでもS男のものではない
ということを行動で示す必要があります。
行動で示すとは、S男がA美さんを大事にしなかったとき、傷つけたときは、
A美さんのなかでS男の優先順位を下げ、距離をおくということです。
優しくする必要はありません。そんな扱いは許さないという気持ちで毅然と振る舞うのです。
ですが・・・。
A美さんはS男と離れることが何よりも怖いのです。
とてもそんなことはできないのです。
なにがそんなにA美さんをS男に執着させるのでしょうか。
A美さんは、S男と付き合い続けてもデートにも行けないし、結婚もできないと分かっているのに、
S男との関係はA美さんにとって苦しいことばかりのように見えるのに、
どうしてそんなS男くんと離れたくないと思ってしまうのでしょうか。
A美さんに話を聞いてみましょう。
うみこ(以下う):「A美さん、S男くんと付き合っていて何か良いことありますか?何かメリットがありますか?」
A美(以下A):「メリットですか?メリットは・・・、1人じゃないこと、でしょうか」
う:「1人じゃないことを求めているなら、S男くんじゃなくてもいいと思うんだけど、S男くんを選んだ理由は何かな?」
A:「うーん、そっかー。それに私はもともと1人は好きなほうでした」
う:「S男くんと一緒にいることで、どんな気持ちが満たされるのかな?」
A:「ああ、それは、私しかS男くんを分かってあげられないとか、私だけがS男くんを救えるかもしれないと思いました」
う:「というのは?」
A:「S男くんは、出会ったときすでに何年も留年していて、学校にも行っていませんでした。大学の友達が連絡してもほとんど返事が返ってこなくて。それなのに、私にだけS男くんは心を開いてくれたんです。付き合うようになってからは彼も学校にまた通い出して、明るくなって、ああ、よかったなぁ!って思いました」
う:「それがA美さんには嬉しかったんだね」
A:「はい。私でもこんなに誰かの役に立てるんだって思って、すごく嬉しかったです」
う:「それが今までずっと続いていると?」
A:「そうですねぇ。パチプロになると言っていたのが最終的には改心してくれたときも嬉しかったですね」
う:「で、幸せですか?」
A:「うーーん。うーーん。難しいですね。でも、S男くんが笑顔でいると本当に嬉しいんですよ」
う:「A美さん自身の生活や人生はどうですか?」
A:「痛いところを・・・。メンタル病んじゃって働けないし、お金もないし、結婚も見込めないし、お先真っ暗かも」
う:「ほぅ。ご両親はどう言っていますか?」
A:「親にはあまり話していないです。自分のこともS男くんのことも。退職したことはさすがに言いましたけど」
う:「ご両親、心配しているんじゃないですか?」
A:「えーと、病気は治ったことにしてあって、前向きな退職ということにしてあるので・・・」
う:「そうなんですか。いつもする質問なんですが、A美さんのお母さんとお父さんの話を聞かせてください。お母さんはどんな人ですか?」
A:「母は、がんばりやで家族思いで・・・自己犠牲精神の強い人ですね」
う:「自己犠牲精神?」
A:「はい。例えば、私が小さい頃、母はケーキが嫌いだってずっと言っていたんですが、それは私たち子供にケーキを譲るための口実で、実はケーキが大好きだということを最近知りました。えー!言ってくれたらよかったのに!って思いました」
う:「そうなんだー。子供を優先するお母さんだったんだね」
A:「そうなんですよ。いつも家族優先で。自分のことをもっと優先してほしいって私は思っていました。手伝わなかった私も悪かったんですが、家のことは母が1人ですべてやっていました。父も兄姉も私も好き勝手にやって、母だけがいつも大変そうでした」
う:「それを見てA美さんは心を痛めてたんだね」
A:「私たちのために犠牲にならないで!お母さんはお母さんのことを大切にして!って思いました」
う:「なんだか少しだけ見えてきたよ~」
A:「ほんとですか?」
う:「A美さんは、お母さんのことを助けたかったんだよね。でも助けられなかったと思ってる」
A:「お母さんに幸せでいてほしかったです」
う:「うん。そして、もしかして自分のせいでお母さんを不幸にしたんじゃないかと思ってる」
A:「自分のせいで母が犠牲になっているのかな、っていうのは思いました。だったら私何も要らないからお母さんも犠牲にならないで、って思っていました」
う:「A美さんの心の奥底には、お母さんを助けたい!っていう強い気持ちがあるんだね。満たされなかったその『助けたい』っていう気持ちがA美さんをずっと動かしてるんだね。さらに言うと、S男くんと別れることは、つまりS男くんを見捨てることになって、また助けられないのか、っていう恐怖があるのかもしれないね」
A:「うーん。私と別れたらS男はいったいどうなってしまうのか、心配ですね」
う:「人が行動するときのパターンやスタイルっていうのはね、4、5歳または10歳前後で形成されると言われていてね(参考書籍3)。大人になって周りの状況がすっかり変わってしまっても、そのスタイルに沿って行動してしまうんだよね。A美さんの場合は、誰かを助けたい!役に立ちたい!っていうスタイルなのかもしれないね」
A:「たしかに、誰かの役に立ちたいっていう気持ちは強いですね」
う:「それから、話はそれるけど、『尽くしたい』ということと『尽くされたい』ということはイコールだから」
A:「はい?」
う:「パートナーを甘やかしてしまうという人は、実は自分が甘えたい人だということ。自分のなかに甘えたいという欲求があるけど、絶対に叶えられないと思っているから、代わりに自分が相手を甘やかしちゃうんだよ。甘えたいという自覚があまりない人も多いけど、それは、受け入れられないに決まっていると思っているから。受け入れられないと分かったときに辛い思いをしたくないから、甘えたいという欲求に触れることすらしたくないんだよ」
A:「甘えたいという欲求を、自分が相手を甘えさせることで満たす?」
う:「そう。そういうこともあるんだよ。A美さんも、甘えたいんじゃないかなぁ?」
A:「甘えられる環境だったら無限大に甘えたいですけど(笑)。あまり甘えられる環境になることがないですね~」
う:「で、話は行動パターン、スタイルの話に戻ります」
A:「はい」
う:「このスタイルは、変えることができます。子供のころにそのスタイルが形成されちゃったからと言って、ずっとそのスタイルに固定させなくてもいいわけです。A美さんもスタイル変えちゃったらどうですか?」
A:「えーと・・・、どうやって?」
う:「気づいて、選択して、決める、といったところでしょうか」
A:「気づいて、選択して、決める?」
う:「はい。A美さんはもう自分のこれまでのスタイルに気づいたので半分くらいできてますね。次はどういうスタイルにするか選んで決めるだけです」
A:「それで、変えられますか?」
う:「はい。決めるのも変えるのも自分ですから。自分のスタイルを自分で決めて変える、それだけです。大事なことなので2回言いましたよ」
A:「なんか、急展開で、ついていけていませんが、そうですか」
う:「そうですね。助けたい!役に立ちたい!っていう気持ちも根強そうですね」
A:「はい、その気持ちはどうすればいいんでしょう?」
う:「こう考えてはどうでしょうか。お母さんは幸せだった。助ける必要はなかった」
A:「え?」
う:「今度聞いてみたらいいですよ。お母さん幸せですか?って」
A:「もし聞いてみたら・・・、『お母さんは幸せだよ~!』って言いそうな気がします・・・」
う:「そうでしょう?幸せだったんですよ、ずっと」
A:「えーー。じゃあ私は勝手に思い込んでいた信念にずっと動かされてたのか・・・」
う:「よくあることですよ~」
A:「えぇぇー(;´Д`)」
う:「それに、もしお母さんが幸せじゃなかったとしても、それはお母さんの問題だから、A美さんに責任はないんだよ」
A:「う~ん。なんとなく自分が悪いような気がしてたんですけど・・・。私のせいじゃないんですね」
う:「これからは、A美さんがどんな人生を送りたいのか、どんなパートナーがいいのか、よく考えてスタイル決めてくださいね」
A:「はい、いろいろ考えてみます」
いかがでしたか?
A美さんが他の人にアプローチされても惹かれなかった理由は、
「彼には私がいなくても大丈夫だから。他にすぐ良い人が見つかると思うから」というものでした。
何も問題を抱えていない、一般的に見れば好条件の男性は、A美さんの「助けたい」というニーズを満たせず、
たくさん問題を抱えていたS男はA美さんの「助けたい」というニーズを満たしつづけていたんですね。
ですがもしもそのニーズが、思い込みによる勘違いだったとしたら・・・。
勘違いに気づいたA美さんが、
今度こそ自分が本当に求めるパートナーを見つけられることを願っています。
幸せな恋愛・結婚をするためには、駆け引きやテクニックよりもまず相手選びが非常に重要です。
このことに関しては、恋ユニレポート「幸せなカップルになるために①」に書いてあるので、ぜひ読んでいただきたいと思います。
また、ぐっどうぃる博士の著書「結婚を考えはじめた女(あなた)に」においても、
不幸にならない結婚のためのパートナーの条件が挙げられています。
・「家族を養う力」と「経済観念」があるか
・心も体も「タフ」であるか、モラルはあるか
・「家族をケアする能力」はあるか
・「恋愛感情」がなくなっても尊敬できるか
これらに当てはまらない人ばかりをパートナーに選んでしまうという人がいれば、
その相手を選ぶことで、自分のどんなニーズが満たされるのか、
そしてそれは自分が本当に満たしたいニーズなのかどうか、考えてみてはいかがでしょうか。
今回も、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
このレポートは全4回で金曜更新予定です。
次回は事例4:U子の場合<幸せを自分から壊してしまう>です。
では、第4回でまたお会いしましょう。
参考書籍:
1.「人を動かす」(D・カーネギー)
2.「結婚を考えはじめた女へ」(ぐっどうぃる博士)
3.「アドラー心理学入門」(岸見一郎)