別れさせ屋

公開:2021-11-06 23:07

投稿者:三郷 聖美

 

出張で工作に参加した話


初めての工作、と言ってもただのお客役の仕事が終わった後、最初にオファーされていた東北地方への出張案件の詳細が来た。
依頼者は男性で、ずっと思いを寄せている女性が結婚したためその旦那と離婚させたいという依頼だった。

旦那の男性と依頼者の思いを寄せる妻の女性が夫婦で買い物に来ているスーパーの中での様子を撮影した写真が添付されていた。
女性は正直言って美人でもなんでもなかった。
痩せていて化粧っ気がなくて、地味な服装をしている30半ばくらいの容姿の人だった。
私はわざわざお金を払って別れさせ屋を頼まれるような人はどんな魔性の女なんだろうと思っていたので、正直驚いた。
別れさせ工作というのはどこか非日常的なもので、お金持ちか美男美女、要するに恵まれた条件にいる一部の人が自分の思い通りに人を動かしたいがためにわざわざお金を払っているという世界線の中の話だと思っていた自分にとって、この写真の中の女性はあまりに現実的で、日常的で要するに非日常の真逆のように見えた。
別れさせ屋を頼む人も、狙われる人もごく普通の人なんだという現実を実感し、私はこの仕事の闇の深さを感じた。
普通の人が手を伸ばせば届くところにあるのだ。

そしてその写真に写る旦那に女性の工作員を接触させるというのがこの工作の進め方だった。
最初に説明があったように、私はすでに接触をしている工作員の友人役で登場する、いわばエキストラのような役回りだった。
主演女優を横で見て勉強してねということなのだろう。

早速集合場所に向かった。駅で調査員と合流してほしいと書かれていたため、教えられた調査員の方に電話をかけると駅まで迎えに来てくれるとのこと。
現れたのは男性で、年齢不詳な人だった。あまり明るい雰囲気の人ではなく、簡単な挨拶を済ますと車に乗りましょうと案内された。
駅の近くに停めてあった車の中を覗くと、女性が車内にいた。この人が先に接触している工作員のようだった。
私は窓の中から見てくる彼女と目が合ったので会釈をして車に乗り込んだ。
車内に入り、名前とよろしくお願いしますと挨拶をすると女性は同じように挨拶をしてすぐに自分のスマホに目を向けた。
運転席に座った調査員の男性が、これから旦那の勤務先にいき、そこで出てくる相手に接触すると説明をして車を走らせた。
15分ほどで勤務先に到着するも、時間は16時頃で、基本的に18時前に出てくることはないと思うという説明をされた。
これから車の中で待機をすることになった。

調査員も女性工作員も全く喋らないので私もなんて話しかけたらいいかわからずずっと黙っていた。
女性工作員は大きなマスクをしていたので顔がわからなかったが、出ている目を見る限りかわいい子だった。
「あの、工作のときなんて呼べばいですか?」と聞くと
「うーん、じゃあ「あや」で!なんて呼べばいいですか?」
「私はミキでお願いします。」
「わかりました~」
こう言ったあと、旦那が出てくるまで一言も喋らなかった。
彼女の口調は嫌な感じでもなく、特に性格のキツさなども感じなかった。
ただ、私と何の話をしたらいいのかわからないし特にしたくもないから話さないのだろう。

その後、旦那が退勤し、車でスーパーに向かったのでそこで私たちも降りてスーパーの中で声をかけた。
車から出る寸前、工作員の女性はマスクを取ってカバンにしまった。
マスクをとった彼女はすごく可愛かった。ふつうはマスクをしている方が可愛いのに彼女は逆だった。
この間見た工作員の女性も可愛かったけど、この人も可愛いかった。
やはり男性に接触するのに容姿は重要なんだろうと思った。

詳細は省くが、当初の目的である連絡先の交換もでき、その日の工作は終わった。

その工作員の女性とは、終わった後は接触した男性の話がきっかけで少し会話した。
話しているうちに同い年だということも分かった。
彼女は普段売れないモデルをしているようで、お金がないと話していた。
会話をしていても、喋りに抑揚がなく、感情が読みにくい人だなと思っていた。
人や周りのことに全く興味がなさそうで、嫌な人ではなかったが、プライベートで仲良くなりたいと思う人ではないなと思った。
同時に、水商売の頃の同じお店の子はみんな会話が面白かったり、笑顔がかわいかったり人間的に魅力を感じる人が多かったが、この女性は容姿こそ素晴らしいが、そういった人間的な魅力やオーラを全く感じなかった。
仕事もやりたいこともなく、モデルとして売れたいという雰囲気もあまり感じなかった。
何のやる気なくも努力もしたくない容姿に恵まれた人が流された人生を歩んでいるだけという風に感じた。

私は、仕事はやるからには頑張りたいし、早く認められたいなと思いながら宿泊先のホテルまで送ってもらうと、携帯に新しい仕事の依頼が来ていた。
差出人は会ったことがない人からだった。署名のフルネームから見て、女性のようである。
「新しい仕事を頼みたいです。◎日空いていますか?男性に接触してもらう案件です」と書かれていた。
私は可能であると返信を出し、ホテルで長かった一日を終えた。

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