この案件からエキストラ的な役ではなく、実際に私がメインの工作員として接触をしてもらうということが書かれていた。
担当の人は私に会ったことがなかったため、一度仕事の前に待ち合わせをして、実際に私と会い、その後工作員としてどのくらいできるかを実際に見てみたいと言われたため、指定された時間にそのターゲットの男性の務める会社のある駅の近くに喫茶店で待ち合わせをした。
私が店の前に着くと女性が立っていた。
カジュアルな服装で年齢の想像が全くできない人だった。
顔の作り自体はそこまで美人ではないが、20代後半~40くらいまで、何歳と言われても納得できるような容姿の人だった。
「三郷です」と声をかけると「あぁ、よろしくね」と言われ、店内に一緒に入った。
その女性は自分でも工作員を行うこともあるようで、社内で一番案件数担当していると言っていた。
まずは案件の概要とどうやって接触したらいいのかの演技指導のようなものをしてもらい、あとはターゲットが出てくるまで一緒に待つことになった。
この女性もテンションの読みが難しく、ただ前回会った女性工作員とはまた違った独特のオーラを持っている人だった。
色々な話を聞きたいため、たくさん話を振ってみるも、聞くことによっては回答が一言で終わってしまうものだったり、あまり長く私と会話を続けるつもりがなさそうだった。
ただ、それでも向かい合って無言でいるのも私は嫌だったため、仕事の話を振ってみた。
「●●さんはどうしてこの仕事を始めたんですか?」
すると、意外と自分の過去に関して色々話をしてくれた。
色々な仕事を転々としてきたようだった。
ただ、実際に成人してからの半分くらいは男性と一緒に暮らしながら生活の面倒を見てもらうような日常だったようで、どの仕事も長くは続かなかったと言っていた。
別れさせ屋の仕事は楽しいか楽しくないかで言ったら楽しくはないが自分には合っていると思うと言っていた。
最終的には長く話せるようにはなったが、相手の顔色を伺いながら地雷を踏まないように話すのでとても疲れた。
その日ターゲットの男性は出てこず、結局この案件はターゲットに接触することのないまま最終的に契約が終わった。
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