転機となった工作①

新しい仕事のメールが来ていた。面接してくれた女性からだった。
「ターゲットに実際に接触するお仕事してみて、現場からの三郷さんの評価は上々みたいですね。ここでちょっと上顧客の方の案件をお任せしてみたいと思います。」
と書いてあった。
私が仕事を引き受けると返信をすると、電話がかかってきた。
工作の概要の説明をするために電話をくれたようだった。
概要はとある女性が愛人をしている男性と別れたいという内容の依頼だった。
男性は某有名企業の役員で、既婚者でありながら依頼者と愛人関係になっている。
ただ、この依頼者の女性、他に結婚したい男性ができたので別れたい、相手の浮気を理由にして口止め料として最後にマンションが欲しいので相手に過失を作ってほしいという依頼だった。
この工作の依頼者は絶対に失敗したくないので、工作員は厳選してほしいし、人数も何人出しても構わない、お金が高くなってもいいというオーダーを出してきたようだった。
この某有名企業の役員の男性とまずは知り合いにならなければならない。
そのためまずは私が接触をしてほしいということだった。
ちなみに、前回出張の工作の時に一緒だったモデルの女の子はこのターゲットの男性が好きそうな見た目だなと思っていたのだが、私より先輩だろうし起用しない理由を聞くと「単純に頭があまりよくないから」と言われた。
「彼女は知性を必要としない案件向きね。顔は可愛いんだけど、喋ってみて分かったでしょ？中身すっからかんじゃない？だからこういう社会的地位が高いターゲットや、顧客が金払いのいい案件には使わない。だから工作員のランクもB止まり。工作員はほとんどがあの子みたいな子が多いの。顔だけ可愛い頭の良くない子。困っちゃうよね。でもあなたはお話がきちんとできそうだし、頭も悪くない。だから期待も込めてこの案件にアサインさせてもらった。」
有名企業の役員の男性と偶然を装って接触なんてできるのだろうかと一瞬不安になったが、せっかく期待を込めて仕事を回してくれたこの女性の顔に泥は塗りたくなかった。
私は翌週、早速ターゲットの男性が依頼者と一緒に暮らしているタワマンの近くに車で待機をした。
すると、別で張り込みをしている調査員からターゲットの車が駐車場から出てきたという連絡があった。
私が乗った車はターゲットの車両を尾行するために動き出した。

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